10 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/02(木) 22:04:39.86 ID:bfEUaxM30
12 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/02(木) 22:09:33.51 ID:bfEUaxM30
――――― ――
梓「こんにちはー……」
澪「あ、梓!」
唯「あずにゃん、良かったあ」
紬「昨日来なかったから皆心配してたのよ?」
梓「すいません」
律「何で昨日無断欠席したんだよ?」
梓「」ビクッ
梓「(いつもより冷たく感じる……昨日あんなこと聞いたからなんだろうけど)」グッ
律「梓?」
梓「すいませんでした、これからはちゃんと連絡するように気をつけます」
律「いや、別にいいけどさ」
唯「ま、あずにゃんも来たしお茶にしようよ!」
――――― ――
梓「こんにちはー……」
澪「あ、梓!」
唯「あずにゃん、良かったあ」
紬「昨日来なかったから皆心配してたのよ?」
梓「すいません」
律「何で昨日無断欠席したんだよ?」
梓「」ビクッ
梓「(いつもより冷たく感じる……昨日あんなこと聞いたからなんだろうけど)」グッ
律「梓?」
梓「すいませんでした、これからはちゃんと連絡するように気をつけます」
律「いや、別にいいけどさ」
唯「ま、あずにゃんも来たしお茶にしようよ!」
――――― ――
昨日、ショックが抜け切らないまま家に帰りついた梓は、すぐに部屋に入るとベッドにもぐりこんだ。
胸の奥がもやもやとしていた。
妙に苦しかった。
梓「(……私だって、律先輩のことなんか大嫌いだよ)」
他の先輩たちと比べて、部長の癖に不真面目でふざけているように見える律のことを、
梓は入部した当時からずっと、嫌いだと思っていた。
梓「(寝たらこんな気分、忘れられるよね……)」
制服のままで、皺がつくことがわかっていても起き上がる気力がなかった。
だから梓はそのまま、律の言葉を頭から締め出そうとぎゅっと目を閉じた。
13 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/02(木) 22:14:08.07 ID:bfEUaxM30胸の奥がもやもやとしていた。
妙に苦しかった。
梓「(……私だって、律先輩のことなんか大嫌いだよ)」
他の先輩たちと比べて、部長の癖に不真面目でふざけているように見える律のことを、
梓は入部した当時からずっと、嫌いだと思っていた。
梓「(寝たらこんな気分、忘れられるよね……)」
制服のままで、皺がつくことがわかっていても起き上がる気力がなかった。
だから梓はそのまま、律の言葉を頭から締め出そうとぎゅっと目を閉じた。
.
梓「……」
梓「(あ、だめだ。昨日のこと思い出したらよけいに変な気分になってきた)」
ギターケースを開けながら、梓はふるふると首を振った。
あの時の気持ちがまた、胸の奥から競りあがってくる。
梓「(嫌いな人に苦手って言われたんだから、清々するはずなのに)」
紬「梓ちゃん?」
梓「は、はい!」
15 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/02(木) 22:18:21.72 ID:bfEUaxM30梓「……」
梓「(あ、だめだ。昨日のこと思い出したらよけいに変な気分になってきた)」
ギターケースを開けながら、梓はふるふると首を振った。
あの時の気持ちがまた、胸の奥から競りあがってくる。
梓「(嫌いな人に苦手って言われたんだから、清々するはずなのに)」
紬「梓ちゃん?」
梓「は、はい!」
律「何ぼーっとしてんだよ?練習すんぞ」
梓「す、すいません」
慌ててギターを持って立ち上がろうとした。
しかし、慌てすぎたせいでギターケースに自分の髪の毛が挟まってしまった。
梓「いたっ……」
唯「あずにゃん大丈夫!?」
澪「梓、何かあったのか?今日ずっと暗い顔してるし……」
梓「そんなこと!」チラッ
律「……」
梓「……ないです」
18 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/02(木) 22:22:19.81 ID:bfEUaxM30梓「す、すいません」
慌ててギターを持って立ち上がろうとした。
しかし、慌てすぎたせいでギターケースに自分の髪の毛が挟まってしまった。
梓「いたっ……」
唯「あずにゃん大丈夫!?」
澪「梓、何かあったのか?今日ずっと暗い顔してるし……」
梓「そんなこと!」チラッ
律「……」
梓「……ないです」
唯「本当に?」
ギターケースの蓋を開け、梓の髪を救出しながら唯が心配そうに訊ねる。
梓は大きく頷いた。もう律のほうは見なかった。
梓「(思い切り目、逸らされたし……)」
紬「それじゃあ一度ふわふわ時間、合わせるのよね、りっちゃん?」
律「え?あ、あぁ、うん」
澪「律も律でどうしたんだよ、考え事?律に至って悩み事はないだろうけど」
律「ひどっ。私だって色々悩んでるんだからな!」
21 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/02(木) 22:24:50.20 ID:bfEUaxM30ギターケースの蓋を開け、梓の髪を救出しながら唯が心配そうに訊ねる。
梓は大きく頷いた。もう律のほうは見なかった。
梓「(思い切り目、逸らされたし……)」
紬「それじゃあ一度ふわふわ時間、合わせるのよね、りっちゃん?」
律「え?あ、あぁ、うん」
澪「律も律でどうしたんだよ、考え事?律に至って悩み事はないだろうけど」
律「ひどっ。私だって色々悩んでるんだからな!」
澪「はいはい」
律「梓」
梓「……はい?」
律「もう演奏できるな?」
梓「……はい」
律「」ジッ
梓「あ、あの……」
律「よーし」フイッ
律「んじゃあ行くぜ、1、2、3!」
23 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/02(木) 22:32:09.76 ID:bfEUaxM30律「梓」
梓「……はい?」
律「もう演奏できるな?」
梓「……はい」
律「」ジッ
梓「あ、あの……」
律「よーし」フイッ
律「んじゃあ行くぜ、1、2、3!」
――――― ――
梓「(……疲れた)」
帰り道、先輩たちと別れ一人で歩く梓は、背負ったギター以外の重みも肩に感じ
ながら足を進めていた。
梓「(思えば私、律先輩と今までちゃんと話したこと、あったっけ?)」
入部してから今までのことを振り返っても、梓は律とちゃんと話した記憶がまったく
と言っていいほどなかった。
梓「(このまま“苦手”じゃなくほんとに嫌われちゃったらどうなるんだろ)」
所詮、ここは女子高。
いじめなんて日常茶飯事だということを、梓はちゃんと知っていた。
25 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/02(木) 22:38:49.49 ID:bfEUaxM30梓「(……疲れた)」
帰り道、先輩たちと別れ一人で歩く梓は、背負ったギター以外の重みも肩に感じ
ながら足を進めていた。
梓「(思えば私、律先輩と今までちゃんと話したこと、あったっけ?)」
入部してから今までのことを振り返っても、梓は律とちゃんと話した記憶がまったく
と言っていいほどなかった。
梓「(このまま“苦手”じゃなくほんとに嫌われちゃったらどうなるんだろ)」
所詮、ここは女子高。
いじめなんて日常茶飯事だということを、梓はちゃんと知っていた。
いくら仲の良いと(梓の周りでは)評判の軽音部でも、そういうことが起こりかねないと
いうことはちゃんとわかっていた。
梓「(まず、絶対に澪先輩とかが私を避けるようになるんだろうな)」
女子のグループというのはリーダー的存在の人の言葉は絶対だ。
そのグループの中心人物が誰かのことを嫌いだと言ったら、その時からその人は、彼女達の
敵になる。
それが、ちょっと前まで仲良くしていた誰かだとしても。
梓「(それからムギ先輩とか、唯先輩とかも……)」
皆自分の周りからいなくなる。
せっかく見つけた、軽音部という居心地のいい場所がなくなってしまう。
27 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/02(木) 22:45:40.43 ID:bfEUaxM30いうことはちゃんとわかっていた。
梓「(まず、絶対に澪先輩とかが私を避けるようになるんだろうな)」
女子のグループというのはリーダー的存在の人の言葉は絶対だ。
そのグループの中心人物が誰かのことを嫌いだと言ったら、その時からその人は、彼女達の
敵になる。
それが、ちょっと前まで仲良くしていた誰かだとしても。
梓「(それからムギ先輩とか、唯先輩とかも……)」
皆自分の周りからいなくなる。
せっかく見つけた、軽音部という居心地のいい場所がなくなってしまう。
もし本当にそうなったら……。
そこまで考えて、梓はその先を想像することを止めた。
梓「何暗くなってんだろ、私」
わざと、自分に喝を入れるために声に出して梓は呟いた。
誰かが自分のことを苦手だとか嫌いだとか言っているのを聞いたら、きっとどんな
人間でも傷付く。
梓「(でも相手は律先輩だもんね、澪先輩や唯先輩たちじゃないんだから……)」
30 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/02(木) 22:50:55.07 ID:bfEUaxM30そこまで考えて、梓はその先を想像することを止めた。
梓「何暗くなってんだろ、私」
わざと、自分に喝を入れるために声に出して梓は呟いた。
誰かが自分のことを苦手だとか嫌いだとか言っているのを聞いたら、きっとどんな
人間でも傷付く。
梓「(でも相手は律先輩だもんね、澪先輩や唯先輩たちじゃないんだから……)」
梓「……大嫌いなんだから」
昨日、思ったことを口にした。
何となくすっきりとした。
梓は普段なら、誰かが自分のことを嫌っていると知れば自然と距離を置くように
していた。しかし、相手は同じ部活で先輩だ。
梓「(どうせ今の今までだってそこまで関わりもなかったんだし、今までどおり接すればいいよね)」
まだ胸に何かが残っている気がする。
しかしそれを無視して、梓は晴れ晴れとした表情をしてみた。
――――― ――
32 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/02(木) 22:56:21.11 ID:bfEUaxM30昨日、思ったことを口にした。
何となくすっきりとした。
梓は普段なら、誰かが自分のことを嫌っていると知れば自然と距離を置くように
していた。しかし、相手は同じ部活で先輩だ。
梓「(どうせ今の今までだってそこまで関わりもなかったんだし、今までどおり接すればいいよね)」
まだ胸に何かが残っている気がする。
しかしそれを無視して、梓は晴れ晴れとした表情をしてみた。
――――― ――
次の日
梓「(よしっ、いつもどおりいつもどおり)」
部室の前で深呼吸。
何度も吸っては吐くを繰り返す。
梓「(これで律先輩さえ中にいなければ完璧なのに)」
そう思いながら、梓は部室の扉を開けた。
そして自分の運を呪った。
律「おっす」
中には律しかいなかった。
律は、読んでいた雑誌から目を上げることなく軽く手を上げて梓を迎えた。
梓「(最悪だ……まだ律先輩以外誰も来てない……)」
33 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/02(木) 23:02:34.84 ID:bfEUaxM30梓「(よしっ、いつもどおりいつもどおり)」
部室の前で深呼吸。
何度も吸っては吐くを繰り返す。
梓「(これで律先輩さえ中にいなければ完璧なのに)」
そう思いながら、梓は部室の扉を開けた。
そして自分の運を呪った。
律「おっす」
中には律しかいなかった。
律は、読んでいた雑誌から目を上げることなく軽く手を上げて梓を迎えた。
梓「(最悪だ……まだ律先輩以外誰も来てない……)」
律「梓、座れば?」
梓「は、はい」
中に入って突っ立ったままだった梓に、
律がやはり視線を梓に移すことなく声を掛けた。梓は裏返ってしまった声で、
自分がまだ律の言葉を引きずってるのを自覚した。
律「……別に緊張しなくてもいいだろ?」
ぎこちなく定位置に腰を下ろした梓に、律が小さく苦笑した。
35 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/02(木) 23:05:58.59 ID:bfEUaxM30梓「は、はい」
中に入って突っ立ったままだった梓に、
律がやはり視線を梓に移すことなく声を掛けた。梓は裏返ってしまった声で、
自分がまだ律の言葉を引きずってるのを自覚した。
律「……別に緊張しなくてもいいだろ?」
ぎこちなく定位置に腰を下ろした梓に、律が小さく苦笑した。
梓「……別に緊張してるわけじゃないです」
小さな声で、梓は答えた。
緊張してるわけじゃない。ただ、自分のことを良く思っていないと知っている人と
二人きりだと思うと、楽しそうになんてしていられるはずない。
律「そ」
梓「はい……」
特に興味もなさそうに律は言うと、再び部室に沈黙が訪れた。
仲の良い間柄の沈黙は、梓は好きだった。しかし、お互い嫌い合っている関係での
沈黙に、梓は慣れていない。
36 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/02(木) 23:11:07.25 ID:bfEUaxM30小さな声で、梓は答えた。
緊張してるわけじゃない。ただ、自分のことを良く思っていないと知っている人と
二人きりだと思うと、楽しそうになんてしていられるはずない。
律「そ」
梓「はい……」
特に興味もなさそうに律は言うと、再び部室に沈黙が訪れた。
仲の良い間柄の沈黙は、梓は好きだった。しかし、お互い嫌い合っている関係での
沈黙に、梓は慣れていない。
どうにも居心地が悪い。
律「なあ梓?」
頭の中で必死に会話の糸口を探していた梓は、だから突然の律の声にびくっと
反応してしまった。
梓「な、なんですか?」
律「……軽音部、好きなんだよな、お前」
梓「……はあ」
梓「(突然何でそんなこと聞くんだろう、律先輩……)」
梓の頭の中に、次々と嫌な考えが浮かんでは消えていく。
軽音部を好きだと言い切った自分のことを、律は他の部員に話すんじゃないだろうか。
そして「私たちは嫌いだっつーの」なんて言って嘲笑うんだろうか、とそんなことばかりが。
41 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/02(木) 23:16:55.06 ID:bfEUaxM30律「なあ梓?」
頭の中で必死に会話の糸口を探していた梓は、だから突然の律の声にびくっと
反応してしまった。
梓「な、なんですか?」
律「……軽音部、好きなんだよな、お前」
梓「……はあ」
梓「(突然何でそんなこと聞くんだろう、律先輩……)」
梓の頭の中に、次々と嫌な考えが浮かんでは消えていく。
軽音部を好きだと言い切った自分のことを、律は他の部員に話すんじゃないだろうか。
そして「私たちは嫌いだっつーの」なんて言って嘲笑うんだろうか、とそんなことばかりが。
梓はそんな自分が嫌で嫌で仕方が無かった。
律「どっち?」
何も答えずに、律から目を逸らして俯いたままの梓に、律が少し苛立ったような声で
梓の返事を催促した。
梓「……私は、普通、です」
だから梓は、素直に自分の気持ちが言えなかった。
もし好きだと正直に言って、今自分が想像していたようなことをされていたら。
そう考えると悔しかったから。
律「……じゃあ軽音部、廃部になってもいいの?」
梓「へ?」
42 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/02(木) 23:20:08.12 ID:bfEUaxM30律「どっち?」
何も答えずに、律から目を逸らして俯いたままの梓に、律が少し苛立ったような声で
梓の返事を催促した。
梓「……私は、普通、です」
だから梓は、素直に自分の気持ちが言えなかった。
もし好きだと正直に言って、今自分が想像していたようなことをされていたら。
そう考えると悔しかったから。
律「……じゃあ軽音部、廃部になってもいいの?」
梓「へ?」
突然の突拍子も無い律の言葉に、流石の梓も俯かせていた顔を上げて律の表情を
覗った。
その表情は、いつものふざけたものじゃなく、真面目な顔だった。
しかし梓が顔を上げたのを見ると、律はすぐに表情を柔らかくした。
律「なーんてな」
梓「冗談、ですよね」
律「まあな。梓が私の軽音部を継いでくれたら、の話だけど」
44 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/02(木) 23:24:28.90 ID:bfEUaxM30覗った。
その表情は、いつものふざけたものじゃなく、真面目な顔だった。
しかし梓が顔を上げたのを見ると、律はすぐに表情を柔らかくした。
律「なーんてな」
梓「冗談、ですよね」
律「まあな。梓が私の軽音部を継いでくれたら、の話だけど」
どういうことですか、と梓は訊ねようとした。
しかし、それを訊ねる前に、部室の扉が勢い良く開いた。
唯「やっほー、りっちゃん、あずにゃん」
澪「遅くなってごめんな」
紬「直にお茶入れるわね」
さっきと全く反対の、いつもの賑やかな軽音部が訪れる。
しかし梓は、またしても嫌な想像しか出来なくなっていた。
梓「(もしかしたら律先輩、私に軽音部を任せるつもり、ないの……?)」
45 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/02(木) 23:29:28.68 ID:bfEUaxM30しかし、それを訊ねる前に、部室の扉が勢い良く開いた。
唯「やっほー、りっちゃん、あずにゃん」
澪「遅くなってごめんな」
紬「直にお茶入れるわね」
さっきと全く反対の、いつもの賑やかな軽音部が訪れる。
しかし梓は、またしても嫌な想像しか出来なくなっていた。
梓「(もしかしたら律先輩、私に軽音部を任せるつもり、ないの……?)」
負の感情が負の感情を呼ぶように、負の考えがまた負の考えを呼んでしまう。
梓の頭の中は、いつのまにか暗い想像で埋め尽くされていた。
唯「あずにゃん、ケーキ食べないのー?」
目の前にある美味しそうなケーキでさえ、食欲なんて涌いてこなかった。
唯のフォークが自分のケーキに刺さってそれを口に入れられてしまっても、
普段なら怒るところなのに、梓は何も言わなかった。
澪「梓?ほんとに昨日からどうしたんだ?」
46 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/02(木) 23:35:38.19 ID:bfEUaxM30梓の頭の中は、いつのまにか暗い想像で埋め尽くされていた。
唯「あずにゃん、ケーキ食べないのー?」
目の前にある美味しそうなケーキでさえ、食欲なんて涌いてこなかった。
唯のフォークが自分のケーキに刺さってそれを口に入れられてしまっても、
普段なら怒るところなのに、梓は何も言わなかった。
澪「梓?ほんとに昨日からどうしたんだ?」
梓「何でもないです」
澪の優しい声ですら、梓の暗い感情を吹き飛ばしてはくれない。
嫌われることは昔から怖かった。
でも、今嫌われているとしても、その相手は自分の嫌いな人。
それなら問題ないと思っていたのに。
梓「すいません、今日はもう帰りますね」
梓「(このままここに居たって何も出来ない……。一旦家に帰って頭を冷やさなきゃ)」
心配そうな先輩の声を背中に受けながら、梓は帰り支度を済ますと部室を出た。
扉を閉めると、微かに先輩たちの会話が聞こえてきた。
聞きたくないのに、梓の身体は勝手にその声に反応して、耳を欹てていた。
59 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/03(金) 01:35:49.98 ID:Jd18DDAb0澪の優しい声ですら、梓の暗い感情を吹き飛ばしてはくれない。
嫌われることは昔から怖かった。
でも、今嫌われているとしても、その相手は自分の嫌いな人。
それなら問題ないと思っていたのに。
梓「すいません、今日はもう帰りますね」
梓「(このままここに居たって何も出来ない……。一旦家に帰って頭を冷やさなきゃ)」
心配そうな先輩の声を背中に受けながら、梓は帰り支度を済ますと部室を出た。
扉を閉めると、微かに先輩たちの会話が聞こえてきた。
聞きたくないのに、梓の身体は勝手にその声に反応して、耳を欹てていた。
すまん、パソコンが動かなくなってた。
続ける。
63 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/03(金) 01:51:45.04 ID:Jd18DDAb0続ける。
唯「りっちゃん……」
律「……から……だろ?」
ドア越しだから途切れ途切れにしか聞こえない。
それでも梓は聞き耳を立て続けた。
澪「……私も最近、少し、苦手かな」
紬「私はいいと思うけど」
一体何の話をしているのだろう。
梓はそれ以上話を聞いていられなくなり、その場から逃げるようにして走り出した。
――――― ――
64 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/03(金) 02:03:27.77 ID:Jd18DDAb0律「……から……だろ?」
ドア越しだから途切れ途切れにしか聞こえない。
それでも梓は聞き耳を立て続けた。
澪「……私も最近、少し、苦手かな」
紬「私はいいと思うけど」
一体何の話をしているのだろう。
梓はそれ以上話を聞いていられなくなり、その場から逃げるようにして走り出した。
――――― ――
次の日も、そのまた次の日も、梓の心が晴れることはなかった。
日に日に軽音部の雰囲気が悪くなっている気さえする。
梓「(変なこと考えるからそんなふうに思っちゃうんだよね……)」
梓「(けど……)」
ギターの手入れをする振りをして、梓はそっと後ろを振りかえった。
四人の先輩が、たった一人真面目に部活動をしている後輩を気にすることもなく
談笑している。
67 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/03(金) 02:16:57.93 ID:Jd18DDAb0日に日に軽音部の雰囲気が悪くなっている気さえする。
梓「(変なこと考えるからそんなふうに思っちゃうんだよね……)」
梓「(けど……)」
ギターの手入れをする振りをして、梓はそっと後ろを振りかえった。
四人の先輩が、たった一人真面目に部活動をしている後輩を気にすることもなく
談笑している。
その中に自分がいないことを改めて意識して、その光景から目を逸らした。
最近、律は愚か他の三人ともまともに話せていないことに梓は気付き、ぐっと
唇を噛締めた。
梓「(もしかしたらもう……)」
もう、恐れていたことが起こり始めているのかも知れない。
たった数日間の間で。
いや、きっとずっと以前から。
梓「(なんて、ね……そんなこと)」
70 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/03(金) 02:21:18.21 ID:Jd18DDAb0最近、律は愚か他の三人ともまともに話せていないことに梓は気付き、ぐっと
唇を噛締めた。
梓「(もしかしたらもう……)」
もう、恐れていたことが起こり始めているのかも知れない。
たった数日間の間で。
いや、きっとずっと以前から。
梓「(なんて、ね……そんなこと)」
あるはずがない、と自分に言い聞かせる。
いつもどおり澪先輩やムギ先輩に曲について聞けばいい。
いつもどおり唯先輩や……律先輩に練習して下さいって怒ればいい。
梓「(嫌われてたらどうしよう……)」
なのに、そんなことばかりが頭に過っては梓の行動を止めてしまう。
形ばかりのギターの手入れを終わらせ、梓は立ち上がった。
それに気付いた唯が、梓に視線を移した。
目が合ったのに、慌てて逸らされた。
梓「(うそ……)」
71 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/03(金) 02:26:27.00 ID:Jd18DDAb0いつもどおり澪先輩やムギ先輩に曲について聞けばいい。
いつもどおり唯先輩や……律先輩に練習して下さいって怒ればいい。
梓「(嫌われてたらどうしよう……)」
なのに、そんなことばかりが頭に過っては梓の行動を止めてしまう。
形ばかりのギターの手入れを終わらせ、梓は立ち上がった。
それに気付いた唯が、梓に視線を移した。
目が合ったのに、慌てて逸らされた。
梓「(うそ……)」
梓は愕然とした。
昨日までは、確かに(律とは怖くて顔も見れなかったが)他の先輩たちと目が合ったって
露骨に避けられることはなかった。
梓「……っ」
声が出ない。
手が震えている。ギターが上手くもてない。
梓「(……本当に私、みんなに嫌われてるの……?)」
ぐっと手に力を込めて、ギターを持ち直した。
持ち慣れているはずのギターが酷く重く感じた。
72 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/03(金) 02:34:20.22 ID:Jd18DDAb0昨日までは、確かに(律とは怖くて顔も見れなかったが)他の先輩たちと目が合ったって
露骨に避けられることはなかった。
梓「……っ」
声が出ない。
手が震えている。ギターが上手くもてない。
梓「(……本当に私、みんなに嫌われてるの……?)」
ぐっと手に力を込めて、ギターを持ち直した。
持ち慣れているはずのギターが酷く重く感じた。
ちょうど、梓の気持ちを汲み取ったかのように部活終了のチャイムが鳴った。
梓はまた練習出来なかったなどと思う余裕もなく、すぐにギターをケースに仕舞った。
梓「(このままじゃきっと、本当に一人になっちゃうよ……)」
一人での惨めな帰り道。
その後ろには、先輩たちが笑いながら歩いている。
それだけは絶対に避けたかった。
梓の中にはもう、先輩たちに話しかけるという選択肢なんて残っていなかった。
だから、ぺこっと形ばかり頭を下げて足早に部室を出て行こうとしたのを呼び止められ、
かなり驚いてしまった。
律「梓、何急いでんだ?」
74 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/03(金) 02:46:39.09 ID:Jd18DDAb0梓はまた練習出来なかったなどと思う余裕もなく、すぐにギターをケースに仕舞った。
梓「(このままじゃきっと、本当に一人になっちゃうよ……)」
一人での惨めな帰り道。
その後ろには、先輩たちが笑いながら歩いている。
それだけは絶対に避けたかった。
梓の中にはもう、先輩たちに話しかけるという選択肢なんて残っていなかった。
だから、ぺこっと形ばかり頭を下げて足早に部室を出て行こうとしたのを呼び止められ、
かなり驚いてしまった。
律「梓、何急いでんだ?」
しかも、事の元凶である律に。
梓は恐る恐る振り向いた。
律「どうしたんだよ?」
澪「……梓?」
梓「あ、の……」
唯「あずにゃん、泣きそうな顔してる」
紬「大丈夫?」
いつもと変わらない、先輩たちの声に梓はほっとした気持ちとともにどうして、と
怒りがこみ上げてきた。
75 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/03(金) 02:51:24.27 ID:Jd18DDAb0梓は恐る恐る振り向いた。
律「どうしたんだよ?」
澪「……梓?」
梓「あ、の……」
唯「あずにゃん、泣きそうな顔してる」
紬「大丈夫?」
いつもと変わらない、先輩たちの声に梓はほっとした気持ちとともにどうして、と
怒りがこみ上げてきた。
意味がわからない。
何でこんなに優しい顔をしているのか。
何でさっきはあんなに私を避けていたのか。
梓「意味、わからないです……」
唯「あ、あずにゃん?」
堪えていた心のダムが決壊しそうになって、梓は慌てて俯いた。
梓の元に駆け寄ろうとした唯を、律が無言で制した。
澪「ごめんな、梓?えーっと……多分この間からの私たちのこと、だよな?」
紬「私たちもやりたくってやってたわけじゃないし、梓ちゃんのこと、皆大好きだから」
梓「で、でも……っ」
77 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/03(金) 02:56:44.22 ID:Jd18DDAb0何でこんなに優しい顔をしているのか。
何でさっきはあんなに私を避けていたのか。
梓「意味、わからないです……」
唯「あ、あずにゃん?」
堪えていた心のダムが決壊しそうになって、梓は慌てて俯いた。
梓の元に駆け寄ろうとした唯を、律が無言で制した。
澪「ごめんな、梓?えーっと……多分この間からの私たちのこと、だよな?」
紬「私たちもやりたくってやってたわけじゃないし、梓ちゃんのこと、皆大好きだから」
梓「で、でも……っ」
律「梓が私たちのこと、どう思ってるのか知りたかっただけだから」
梓「え……?」
梓の様子を見て、律が静かに呟くように言った。
梓が律の方をちゃんと見たのを確認すると、律は言葉を続けた。
律「前に聞いたよな?梓は軽音部が好き?」
梓「えっと……」
律「梓は、私たちのことが好き?」
とてもからかっているようには見えなかった。
律以外の三人だって、律と同じように真剣に梓を見詰めていた。
梓はたじろぎながらも、答えた。
梓「好き、ですけど……」
78 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/03(金) 02:58:14.62 ID:Jd18DDAb0梓「え……?」
梓の様子を見て、律が静かに呟くように言った。
梓が律の方をちゃんと見たのを確認すると、律は言葉を続けた。
律「前に聞いたよな?梓は軽音部が好き?」
梓「えっと……」
律「梓は、私たちのことが好き?」
とてもからかっているようには見えなかった。
律以外の三人だって、律と同じように真剣に梓を見詰めていた。
梓はたじろぎながらも、答えた。
梓「好き、ですけど……」
だめだ、眠くて仕方無い……。
頭が重いので誤字とか変な部分多いと思いますが最後まであとちょっとなので
見逃してやって下さい。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B003Y5HU5G/kanasoku-22/ref=nosim/
81 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/03(金) 03:08:07.91 ID:Jd18DDAb0頭が重いので誤字とか変な部分多いと思いますが最後まであとちょっとなので
見逃してやって下さい。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B003Y5HU5G/kanasoku-22/ref=nosim/
律「……そっか」
唯「本当のこと言うとね、あずにゃん。確かに確かめたかったっていうのもあるけど、
あずにゃん、これから一人になっちゃうから」
紬「私たちが卒業しちゃったら……ね?」
澪「だから梓にちゃんとわかっててほしかった。私たちがいない生活……って律がね」
律「ちょ、ばかっ、言うなって言っただろ!」
澪「本当は反対したんだよ、こんなやり方は梓を傷つけちゃうだろって」
梓「……はい」
澪「けど律が強引に」
紬「次期部長として梓ちゃんの忍耐強さを確かめるって意気込んでたのよね」
律「ごめん……。梓を泣かせちゃうとは思ってなかった」
91 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/03(金) 03:22:55.99 ID:Jd18DDAb0唯「本当のこと言うとね、あずにゃん。確かに確かめたかったっていうのもあるけど、
あずにゃん、これから一人になっちゃうから」
紬「私たちが卒業しちゃったら……ね?」
澪「だから梓にちゃんとわかっててほしかった。私たちがいない生活……って律がね」
律「ちょ、ばかっ、言うなって言っただろ!」
澪「本当は反対したんだよ、こんなやり方は梓を傷つけちゃうだろって」
梓「……はい」
澪「けど律が強引に」
紬「次期部長として梓ちゃんの忍耐強さを確かめるって意気込んでたのよね」
律「ごめん……。梓を泣かせちゃうとは思ってなかった」
梓「べ、別に泣いてなんかないですっ」
慌てて梓は涙を拭うと首を振った。
唯が、梓の頭を撫でると漸く気分が落ち着いた。
梓「最低、ですよ……」
呟いた。
こんなの酷いと。どれだけ自分が傷付いたのか、この人たちは知らない。
それなのに、安心してしまってる自分がいる。
律「えっと……」
唯「あずにゃん、許して、くれないかな……?」
不安そうな唯の声に、梓はしょうがないなあと笑った。
何より今は、また先輩たちと一緒に居れることが嬉しい。
ただ、梓にだって意地はある。
梓「……許しませんよ?」
92 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/03(金) 03:33:38.98 ID:Jd18DDAb0慌てて梓は涙を拭うと首を振った。
唯が、梓の頭を撫でると漸く気分が落ち着いた。
梓「最低、ですよ……」
呟いた。
こんなの酷いと。どれだけ自分が傷付いたのか、この人たちは知らない。
それなのに、安心してしまってる自分がいる。
律「えっと……」
唯「あずにゃん、許して、くれないかな……?」
不安そうな唯の声に、梓はしょうがないなあと笑った。
何より今は、また先輩たちと一緒に居れることが嬉しい。
ただ、梓にだって意地はある。
梓「……許しませんよ?」
――――― ――
ここ数日間、色々あったことが嘘のように、次の日からの軽音部はいつもどおりだった。
梓も普段どおりの生活を送っている。
また掃除当番で遅くなってしまった梓は、急いで部室に向かっていた。
そして、勢い良く扉を開けると、律の姿しかなかった。
梓「あ……こんにちは」
律「ん」
梓はいつもの場所に座ると、居心地が悪くて辺りを落ち着きなく見回した。
ここ最近、ずっと気になっていることがあった。
『梓?あぁ、あいつは苦手だな』
律の言葉が再び、梓の頭でリピートされる。
まだ、このことについてはちゃんと聞いていなかった。
梓「律先輩」
95 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/03(金) 03:40:23.11 ID:Jd18DDAb0ここ数日間、色々あったことが嘘のように、次の日からの軽音部はいつもどおりだった。
梓も普段どおりの生活を送っている。
また掃除当番で遅くなってしまった梓は、急いで部室に向かっていた。
そして、勢い良く扉を開けると、律の姿しかなかった。
梓「あ……こんにちは」
律「ん」
梓はいつもの場所に座ると、居心地が悪くて辺りを落ち着きなく見回した。
ここ最近、ずっと気になっていることがあった。
『梓?あぁ、あいつは苦手だな』
律の言葉が再び、梓の頭でリピートされる。
まだ、このことについてはちゃんと聞いていなかった。
梓「律先輩」
律「なに?」
梓「律先輩は、私のことが嫌いですか」
以前律に聞かれたように、反対の言葉を使って梓は訊ねた。
律はやっぱり読んでいた雑誌から顔を上げることなく、答えた。
律「……苦手、かもな」
終わる。
101 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/03(金) 03:47:32.92 ID:Jd18DDAb0梓「律先輩は、私のことが嫌いですか」
以前律に聞かれたように、反対の言葉を使って梓は訊ねた。
律はやっぱり読んでいた雑誌から顔を上げることなく、答えた。
律「……苦手、かもな」
終わる。
>>97
それを書いても話が元に戻らないと思って描写するの諦めました。
本当は、最初の律の台詞は、梓が苦手なんじゃなく、梓は○○が苦手だという意味の
つもりで書いてました。澪のも一緒で、梓が苦手なものが自分も苦手、という
意味でした。
98 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/03(金) 03:43:27.99 ID:Jd18DDAb0それを書いても話が元に戻らないと思って描写するの諦めました。
本当は、最初の律の台詞は、梓が苦手なんじゃなく、梓は○○が苦手だという意味の
つもりで書いてました。澪のも一緒で、梓が苦手なものが自分も苦手、という
意味でした。
意味のわからない締めでごめんなさい。
言い訳になりますが、本当は梓の勘違い律梓のはずでしたが、オチがばれたよう
なので路線変更しようかと迷いながら書いてて、結局無理矢理元に戻そうとしたらこんなことに。
本当にごめんなさい。
105 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/03(金) 03:54:15.51 ID:Jd18DDAb0言い訳になりますが、本当は梓の勘違い律梓のはずでしたが、オチがばれたよう
なので路線変更しようかと迷いながら書いてて、結局無理矢理元に戻そうとしたらこんなことに。
本当にごめんなさい。
>>102>>103
すいません、また何れ同じ感じで挑戦します、
最後までありがとうございました
104 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/03(金) 03:52:20.63 ID:Jd18DDAb0すいません、また何れ同じ感じで挑戦します、
最後までありがとうございました
これ書いててガチいじめssが書きたくなってしまった。
明日起きて残ってたら>>64から別√という感じで書くかも。
183 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/04(土) 12:05:39.50 ID:4Kn5QFst0明日起きて残ってたら>>64から別√という感じで書くかも。
梓「……もうやだよ」
梓から逃げるようにして教室を出て行った純の後姿は、心なしか、楽しんでいる
ように見えた。
それでも梓は鞄を持つと、重い足取りで軽音部に向かった。
しかし、部室の扉の前で、とうとう梓の足は止まってしまった。
中から聞きなれた声が聞こえてくる。
梓「(どうして純が軽音部にいるの!?)」
184 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/04(土) 12:12:29.69 ID:4Kn5QFst0梓から逃げるようにして教室を出て行った純の後姿は、心なしか、楽しんでいる
ように見えた。
それでも梓は鞄を持つと、重い足取りで軽音部に向かった。
しかし、部室の扉の前で、とうとう梓の足は止まってしまった。
中から聞きなれた声が聞こえてくる。
梓「(どうして純が軽音部にいるの!?)」
確かに中から聞こえてくるのは、梓の親友である純の声だった。
澪「ふふ、ありがと純ちゃん」
純「い、いえ!澪先輩のためなら!あ、勿論他の先輩方も……」
律「いいっていいって、気遣わなくっても。あーあ、あんな後輩じゃなくって
純ちゃんみたいな子がうちに入ってくれれば良かったのにな」
唯「ほんとだよね!……あずにゃ……あんな後輩なんていらなかったよー」
紬「あ、純ちゃんお茶飲む?」
純「すいません、頂きます」
梓「(もしかして、純もあの噂聞いて……!)」
ここ数日の間、澪のファンクラブの間で、澪が梓を「嫌ってる」という噂が
流れていた。その噂のために、澪のファンであるクラスメートの一部や、他学年の人間に
梓は避けられるようになっていた。
純も澪のファンだから、その噂を聞いて梓を避け始めたと考えてもおかしくない。
186 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/04(土) 12:35:11.65 ID:4Kn5QFst0澪「ふふ、ありがと純ちゃん」
純「い、いえ!澪先輩のためなら!あ、勿論他の先輩方も……」
律「いいっていいって、気遣わなくっても。あーあ、あんな後輩じゃなくって
純ちゃんみたいな子がうちに入ってくれれば良かったのにな」
唯「ほんとだよね!……あずにゃ……あんな後輩なんていらなかったよー」
紬「あ、純ちゃんお茶飲む?」
純「すいません、頂きます」
梓「(もしかして、純もあの噂聞いて……!)」
ここ数日の間、澪のファンクラブの間で、澪が梓を「嫌ってる」という噂が
流れていた。その噂のために、澪のファンであるクラスメートの一部や、他学年の人間に
梓は避けられるようになっていた。
純も澪のファンだから、その噂を聞いて梓を避け始めたと考えてもおかしくない。
それとも、元々軽音部と親交のあった純だから、直接何かあったのか。
いずれにしても、純が梓から離れ、軽音部側についたことだけは確かだった。
梓「(私たち、親友じゃなかったの!?ねえ純!)」
律「にしても、純ちゃんあいつと仲良かったんじゃなかったっけ?」
純「私も、梓ちょっと面倒臭いなって思ってましたし……」
梓「……!」
『……ただ、やっぱ気になっちゃうんだよ、親友として』
『だから何かあったんならいつでも相談してきなよ?』
頭の中に、いつか聞いた純の言葉が響いた。
本当に、自分の居場所がどこにもなくなったんだと梓は気付いた。
もしかしたら、梓が気付いてなかっただけで、もうずっと前からなのかも知れない。
梓「(全部全部全部、純の優しい言葉は嘘……)」
189 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/04(土) 13:34:25.60 ID:4Kn5QFst0いずれにしても、純が梓から離れ、軽音部側についたことだけは確かだった。
梓「(私たち、親友じゃなかったの!?ねえ純!)」
律「にしても、純ちゃんあいつと仲良かったんじゃなかったっけ?」
純「私も、梓ちょっと面倒臭いなって思ってましたし……」
梓「……!」
『……ただ、やっぱ気になっちゃうんだよ、親友として』
『だから何かあったんならいつでも相談してきなよ?』
頭の中に、いつか聞いた純の言葉が響いた。
本当に、自分の居場所がどこにもなくなったんだと梓は気付いた。
もしかしたら、梓が気付いてなかっただけで、もうずっと前からなのかも知れない。
梓「(全部全部全部、純の優しい言葉は嘘……)」
梓の心を支えていたものが無くなってしまった。
もうどこからも立っていられる力なんて涌いてこない。
裏切られたとは思わなかった。
ただ、ひたすらに悲しかった。
梓「(所詮女の友情なんてこんなものなんだって思えればいいのに……)」
ずっと我慢していたものが、一気に溢れ出てくるのを感じた。
それでも涙は一滴も零れない。
感覚が麻痺してしまったのか。それとももう枯れてしまったのか。
ただ梓の気持ちは、まさに「絶望」だった。
梓「死んじゃえばいい……、みんな死んじゃえばいいのに!」
190 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/04(土) 13:45:30.55 ID:4Kn5QFst0もうどこからも立っていられる力なんて涌いてこない。
裏切られたとは思わなかった。
ただ、ひたすらに悲しかった。
梓「(所詮女の友情なんてこんなものなんだって思えればいいのに……)」
ずっと我慢していたものが、一気に溢れ出てくるのを感じた。
それでも涙は一滴も零れない。
感覚が麻痺してしまったのか。それとももう枯れてしまったのか。
ただ梓の気持ちは、まさに「絶望」だった。
梓「死んじゃえばいい……、みんな死んじゃえばいいのに!」
掠れた声で、梓は言った。
中からは何の反応も無い。きっと梓の声など聞こえていないのだろう。
真正面から向き合う勇気は、梓にない。
だから聞こえてなくてよかった、と梓は思い、そして何も出来ない自分に愕然とした。
梓は虚ろになった瞳を、扉に投げ掛ける。
開いていないのに、中の様子が手に取るようにわかる気がした。
今もまだ、梓のことを嘲笑い、梓がバカみたいに自分達の遊び道具になるために
中に入ってくるのを待っている。
梓「(そうだ、別に中に入らなくたっていいんだ)」
梓「(皆皆、自分のしたことを悔やんで苦しめばいい)」
ふらふらとした足取りで、梓は部室の前を離れた。
そのまま、屋上へと続く階段を上っていく。
一段、二段、と段々上がるごとに身体が震え始めた。
しかし梓は止まらない。
192 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/04(土) 13:52:49.51 ID:4Kn5QFst0中からは何の反応も無い。きっと梓の声など聞こえていないのだろう。
真正面から向き合う勇気は、梓にない。
だから聞こえてなくてよかった、と梓は思い、そして何も出来ない自分に愕然とした。
梓は虚ろになった瞳を、扉に投げ掛ける。
開いていないのに、中の様子が手に取るようにわかる気がした。
今もまだ、梓のことを嘲笑い、梓がバカみたいに自分達の遊び道具になるために
中に入ってくるのを待っている。
梓「(そうだ、別に中に入らなくたっていいんだ)」
梓「(皆皆、自分のしたことを悔やんで苦しめばいい)」
ふらふらとした足取りで、梓は部室の前を離れた。
そのまま、屋上へと続く階段を上っていく。
一段、二段、と段々上がるごとに身体が震え始めた。
しかし梓は止まらない。
勢いに任せて、最後の数段を駆け上がって屋上の扉を開けた。
冷たい風が梓の身体をよけいに震わせた。
梓はゆっくりと、転落防止の柵に近付こうと歩き出した。
梓「……!?」
そこに先客がいた。
それも、梓の良く知ってる人物が。
梓は自分に背を向けていて、梓の存在に気付かないその人物に向かって慌てて
駆け出した。
梓「憂!?」
194 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/04(土) 14:27:00.77 ID:4Kn5QFst0冷たい風が梓の身体をよけいに震わせた。
梓はゆっくりと、転落防止の柵に近付こうと歩き出した。
梓「……!?」
そこに先客がいた。
それも、梓の良く知ってる人物が。
梓は自分に背を向けていて、梓の存在に気付かないその人物に向かって慌てて
駆け出した。
梓「憂!?」
またパソコンおかしかった……
195 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/04(土) 14:32:54.72 ID:4Kn5QFst0憂「……梓ちゃん!」
梓「憂、何してるの!?」
憂「こ、来ないで!」
びくっと梓は立ち止まった。
憂は、柵に足を掛けたまま梓を振り返る。
その目は本気だった。
梓は、自殺するつもりだったんだから誰がここで何をしていようと関係ない、そう思っていたが、
それが嘗ての友達――梓の傍から離れた後、自ら孤立していった憂――だと
知ると流石の梓も止めずにはいられなかった。
198 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/04(土) 15:32:42.58 ID:4Kn5QFst0梓「憂、何してるの!?」
憂「こ、来ないで!」
びくっと梓は立ち止まった。
憂は、柵に足を掛けたまま梓を振り返る。
その目は本気だった。
梓は、自殺するつもりだったんだから誰がここで何をしていようと関係ない、そう思っていたが、
それが嘗ての友達――梓の傍から離れた後、自ら孤立していった憂――だと
知ると流石の梓も止めずにはいられなかった。
梓「憂、何で!?どうして憂も飛び降りようなんて……」
憂「……“も”?」
梓「え?」
憂「梓ちゃん、今“憂も”って言ったよね?もしかして梓ちゃん、自殺するつもりだったの!?」
梓「え……」
憂「逃げるの!?梓ちゃんは逃げちゃうの!?」
梓「なっ……」
梓「(違う、私は逃げるわけじゃない!先輩たちや純にわからせてやるために……!)」
憂「梓ちゃんはまだ死ぬべきじゃない!」
梓「……!」
憂「だから、ね?早く戻って。お願い、梓ちゃん。これ以上私を苦しめないで」
梓「……どういうこと?意味わかんないよ……」
199 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/04(土) 15:34:14.61 ID:4Kn5QFst0憂「……“も”?」
梓「え?」
憂「梓ちゃん、今“憂も”って言ったよね?もしかして梓ちゃん、自殺するつもりだったの!?」
梓「え……」
憂「逃げるの!?梓ちゃんは逃げちゃうの!?」
梓「なっ……」
梓「(違う、私は逃げるわけじゃない!先輩たちや純にわからせてやるために……!)」
憂「梓ちゃんはまだ死ぬべきじゃない!」
梓「……!」
憂「だから、ね?早く戻って。お願い、梓ちゃん。これ以上私を苦しめないで」
梓「……どういうこと?意味わかんないよ……」
憂「梓ちゃん、私がどうしてクラスで独りになったかわかる?私はお姉ちゃんに、
梓ちゃんと話すなって言われた。けど、梓ちゃんは私の大切な友達なの!」
梓「……!」
憂「でもお姉ちゃんだって大切で、私が梓ちゃんを避けるようになったのを知って
私を沢山褒めてくれた!それが嬉しかったけど、梓ちゃんのことを思うとすごく
悲しかったの。だから私は、せめて梓ちゃんと同じ立場でいたら梓ちゃんも心が楽になるんじゃ
ないかなって思って独りを選んだんだよ!」
梓「……」
憂「けどもう限界だよ梓ちゃん。私、お姉ちゃんも梓ちゃんも苦しむの、見たくない」
憂「だから……。梓ちゃんは戻ってよ、ね?」ニコ
梓「う、い……?」
200 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/04(土) 15:35:42.32 ID:4Kn5QFst0梓ちゃんと話すなって言われた。けど、梓ちゃんは私の大切な友達なの!」
梓「……!」
憂「でもお姉ちゃんだって大切で、私が梓ちゃんを避けるようになったのを知って
私を沢山褒めてくれた!それが嬉しかったけど、梓ちゃんのことを思うとすごく
悲しかったの。だから私は、せめて梓ちゃんと同じ立場でいたら梓ちゃんも心が楽になるんじゃ
ないかなって思って独りを選んだんだよ!」
梓「……」
憂「けどもう限界だよ梓ちゃん。私、お姉ちゃんも梓ちゃんも苦しむの、見たくない」
憂「だから……。梓ちゃんは戻ってよ、ね?」ニコ
梓「う、い……?」
憂「お姉ちゃんもみーんな、梓ちゃんを待ってるよ?」
梓「待ってない……!誰も私のことなんか……」
憂「待ってるよ。今、メール送ってあげたよ梓ちゃん。梓ちゃんが屋上に着いたよって」
突然、屋上の扉が音をたてて開いた。
唯や澪、紬、そして律がいた。もちろん、純の姿もある。
純は目に涙を溜めながら、梓を見ていた。
梓「……皆、さん」
律「ごめんな梓」
202 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/04(土) 15:38:10.60 ID:4Kn5QFst0梓「待ってない……!誰も私のことなんか……」
憂「待ってるよ。今、メール送ってあげたよ梓ちゃん。梓ちゃんが屋上に着いたよって」
突然、屋上の扉が音をたてて開いた。
唯や澪、紬、そして律がいた。もちろん、純の姿もある。
純は目に涙を溜めながら、梓を見ていた。
梓「……皆、さん」
律「ごめんな梓」
近付いてくる。
笑みを浮かべながら律が。
梓は後ずさった。
頭が混乱して、何が何だかわからなかった。
梓「(私の……いじめは終わったの……?)」
律「本当に悪かった」ニヤニヤ
梓「……あ、の……」
更に後ずさる。
澪や紬、唯は、律の様子を見ているだけだった。
柵が背中に当たる。
律が近付いてくる。
憂の足が、梓のすぐ近くにあった。
梓は憂を見上げた。
憂も笑っていた。
梓「うい……」
憂「良かったね、梓ちゃん。もう終わりだよ」
204 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/04(土) 15:40:32.90 ID:4Kn5QFst0笑みを浮かべながら律が。
梓は後ずさった。
頭が混乱して、何が何だかわからなかった。
梓「(私の……いじめは終わったの……?)」
律「本当に悪かった」ニヤニヤ
梓「……あ、の……」
更に後ずさる。
澪や紬、唯は、律の様子を見ているだけだった。
柵が背中に当たる。
律が近付いてくる。
憂の足が、梓のすぐ近くにあった。
梓は憂を見上げた。
憂も笑っていた。
梓「うい……」
憂「良かったね、梓ちゃん。もう終わりだよ」
梓「……っ」
憂は梓に手を伸ばした。
梓の腕を掴んで、梓の身体を柵の上に引っ張り上げる。
柵の外に、梓の身体が出る。下の様子が見え、梓は恐怖し慌てて降りようとした。
しかし、律の手がそれを許さなかった。柵から降ろすどころか、梓の背中を押して
転落させようとする。
梓「やっ……だ……!」
律「最初から死のうとしてたんだろ?それを手伝ってやってんだよ」
梓「憂……どういう、こと、なの……!?」
憂「梓ちゃん、知らないほうがいいことも沢山あるんだよ?それでも教えて欲しいなら
教えてあげる」
憂「さっきの言葉、ぜーんぶ嘘だよ。梓ちゃんが間違ったことしないようにここ最近ずっと
見張ってたの。それで梓ちゃんがここに来ちゃったからおしおきなんだよ」
梓「……そん、な……」
律「降ろして欲しいなら叫べよ、そうだなあ、私は糞ゴキブリですとか?」
205 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/04(土) 15:41:16.84 ID:4Kn5QFst0憂は梓に手を伸ばした。
梓の腕を掴んで、梓の身体を柵の上に引っ張り上げる。
柵の外に、梓の身体が出る。下の様子が見え、梓は恐怖し慌てて降りようとした。
しかし、律の手がそれを許さなかった。柵から降ろすどころか、梓の背中を押して
転落させようとする。
梓「やっ……だ……!」
律「最初から死のうとしてたんだろ?それを手伝ってやってんだよ」
梓「憂……どういう、こと、なの……!?」
憂「梓ちゃん、知らないほうがいいことも沢山あるんだよ?それでも教えて欲しいなら
教えてあげる」
憂「さっきの言葉、ぜーんぶ嘘だよ。梓ちゃんが間違ったことしないようにここ最近ずっと
見張ってたの。それで梓ちゃんがここに来ちゃったからおしおきなんだよ」
梓「……そん、な……」
律「降ろして欲しいなら叫べよ、そうだなあ、私は糞ゴキブリですとか?」
屋上に笑いが広がる。
梓はぐっと唇を噛締めた。律の梓を押す力が強くなる。
もう本当に、誰も信じられなくなった。
心の枷が外れた気がした。自分を止めていた何かが、消えてなくなった。
梓は柵を掴んでいた手の力を緩めた。
押されていた身体が一気に柵の外に。
そのまま、梓は何にも逆らわずに、ただ落ちていくに身を任せた。
梓「皆大嫌いだよ……」
遠くから悲鳴が聞こえた。
終わる。
梓はぐっと唇を噛締めた。律の梓を押す力が強くなる。
もう本当に、誰も信じられなくなった。
心の枷が外れた気がした。自分を止めていた何かが、消えてなくなった。
梓は柵を掴んでいた手の力を緩めた。
押されていた身体が一気に柵の外に。
そのまま、梓は何にも逆らわずに、ただ落ちていくに身を任せた。
梓「皆大嫌いだよ……」
遠くから悲鳴が聞こえた。
終わる。
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