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1 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/05(火) 21:36:19.60 ID:K2WRvXDY0
魔王「え? え?」
勇者「・・・・」
魔王「そ、それって・・えーと・・?」
勇者「俺とお前で世界征服だ」
魔王「そ、それは・・うーん・・」
勇者「なんて・・な!!」 

 大剣が突如、勇者の手中に現れると同時に振り下ろされ、魔王の体に大きな傷を作った。

魔王「くあっ・・!? ひ、卑怯だぞ・・」

 どくどくと、紫の血液を流す魔王。
 美しい顔が苦痛に歪む。

勇者「・・別に殺そうって訳じゃない」
魔王「・・・・」
勇者「もう気を失ったか。まあ良い」


 




3 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/05(火) 21:38:42.05 ID:K2WRvXDY0
 勇者は床に倒れている魔王へ向けて魔法を放つ。
 無機物に対してのみ反応し、それらを消し去る魔術。
 元々は敵対者の武具を弱体化させる目的で作られたのだが、
 勇者程の魔力の持ち主が使うと、それにとどまらず、消滅へと至る。

勇者「・・体は男だな」
 
 衣服、魔竜の鱗で作られた鎧共々を消し去られ、裸体を晒す魔王を見下してつぶやいた。

勇者「まあそれは、これから何とでもなるか・・」

 転移魔法によって呼び寄せた、あらかじめ用意してあった衣服を魔王へ着せる。
 それはどこからどう見ても、女性用のワンピースであった。


5 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/05(火) 21:43:02.41 ID:K2WRvXDY0
魔王「・・はっ!?」
勇者「おはよう」
魔王「あ・・あれ?」

 辺りを見回すが、魔王に状況を飲み込む事はできなかった。
 自分は勇者に殺されてたはずなのに、何時もの寝室で目を覚ましたのだ。
 傍らに居る勇者から殺気が感じられないのも妙だ。

勇者「傷はもう治っているはずだ」
 
 言うなり、勇者は掛け布団を剥ぎ取った。

魔王「え・・?」

 傷を確認するために自らの体に目をやって、魔王の思考は再び混乱へと向かう。
 人間の小娘が着るような衣服を身に纏っていたからだ。

勇者「行くぞ」

 何の説明も無しに勇者に手を引かれ魔王はベッドから引きずり出される。

魔王「ちょっと待てよ!! これは何なんだ!!」
勇者「服だ。俺がお前の為に用意した」


7 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/05(火) 21:46:30.56 ID:K2WRvXDY0
魔王「意味が分からん!!」
勇者「お前は自分の衣服を選ぶ為に、生きているのか?」

 またしても突然現れた剣が魔王に突きつけられる。
 先の経験から下手な動きを取るのは危険だと察し、魔王は勇者の次の挙動を待つ。

勇者「お前の目的は世界征服だろう? それとも人間のように着飾る事か?」
魔王「・・・・」
勇者「分かれば良い。黙ってついて来い」

 勇者は剣を消すと、寝室の外へと歩き始めた。

魔王「待てよ!! 行くって、どこに? っていうかお前は何にがしたいんだよ!!」

 叫びながら後を追ってくる魔王の質問に、勇者は一言で返した。

勇者「仲間の一人を殺す」


9 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/05(火) 21:53:26.04 ID:K2WRvXDY0
魔王「どういうことだよ」
勇者「そのままの意味だ」
魔王「仲間って、お前のか?」
勇者「お前の仲間なら全て殺しただろう」
魔王「・・・・」
勇者「ドレムルの村に踊り子が居る。かつてパーティを組んでいた」
魔王「かつて?」
勇者「魔王城に連れて来るには足手まといでしかなかったんでな。他の奴らも」
魔王「そう言えばお前は一人だよな」
勇者「降りるぞ。つかまれ」

 天空に浮かぶ魔王城と、地上の行き来に使われる魔方陣の上に立った。
 勇者は右手を伸ばし、魔王の体を受け入れようとする。

魔王「ははっ、何言ってるんだよ。掴まる必要なんてないだろ」
勇者「・・やってみろ」
魔王「・・・・」

 魔方陣から降りた勇者に入れ替わり、魔王が魔方陣へと上る。
 左手を床につけ、魔力を送る。
 そうすることで魔方陣は起動し、陣の中の者を地上へと転送する。

魔王「あ、あれ・・?」
 
 しかし、魔法陣が起動する時に起こるはずの発光は、まったくない。


11 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/05(火) 21:58:21.77 ID:K2WRvXDY0
魔王「どうして・・」
勇者「掴まれ」
魔王「・・何をした?」
勇者「何も。これから俺たちは二人で世界征服をするんだ」
魔王「・・・・」
勇者「どちらかが魔方陣を使えるなら問題は無い」
魔王「陣を書き換えたのか?」
勇者「降りるぞ」
魔王「・・・・」

 納得は行かないが、しぶしぶ魔王は勇者の手に抱かれる形でくっついた。
 勇者がつま先で床を軽く、タンッと叩くと今度は魔方陣は緑の光を放った。
 程なく、転送が始まり、勇者と魔王の体は亜空間を通り、地上へと送られる。

勇者「転送座標は書き換えた。村はすぐそこだ」
魔王「・・おい」

 今度は今までとは逆に、勇者が剣を突きつけられる形になった。
 魔王の手からは炎が剣状に発生している。

魔王「お前の目的は何だ?」


12 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/05(火) 22:03:02.52 ID:K2WRvXDY0
勇者「お前と喧嘩がしたい訳では無い」

 勇者は両手を挙げて大げさにそれを表現した。

魔王「その割にはずいぶん自分勝手じゃないか」
勇者「当然だろう。弱者は従うべきだ」
 
 勇者の言葉にいよいよ腹を立てた魔王が飛び掛る。
 炎の剣は簡単に勇者の首を切り落とした。
 噴出す血が辺りに飛び散る。
 あまりの呆気なさに一瞬戸惑うが、すぐにこの程度の者では無い事を思い出し、体を回転させる。
 案の定、魔王の読みは的中し、背後に勇者の姿を捉えた。
 しかし、反撃にはいたらない。勇者の手が魔王の手首を潰さんばかりに、握っていた。

魔王「くぅ・・」
勇者「握りつぶしても良い」
魔王「くそ・・」
勇者「目的の為に手段を選ぶな。俺に従え」

 魔王の手首を離すと同時に、勇者は村へと向かって歩き出した。
 煮え切らない思いを抱えたまま、魔王もその後追う。


17 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/05(火) 22:18:25.56 ID:K2WRvXDY0
魔王「・・本当に何がしたいんだ」
勇者「世界征服だ」
魔王「お前は人間だろう?」
勇者「知らん」
魔王「・・・・」
勇者「同胞を殺すにはもう少し躊躇いを持てると思うが」
魔王「・・俺だって魔族同士での殺し合いなんてそうしない」
勇者「居た」

 これから勇者の手によって命を絶たれる少女は、優雅に踊っていた。
 魔王は息を呑んだ。
 露出の高い衣を纏った美しい肢体が舞う様は、妖艶な魅力を放っていた。
 もちろん放たれているのは魅力だけではない。同時に魔力も放たれているのだ。
 見る者を虜にする魔性の踊り。
 何体もの魔族が今の魔王のように踊りの魅力に取り付かれ、立ち尽くしたまま勇者の剣に切り裂かれた。

勇者「目を覚ませ」
 
 平手打ちが魔王の頬へ。

魔王「・・っ」
勇者「鑑賞に来たわけじゃないだろう。殺すぞ」
魔王「あ、ああ・・」

 もう少し、この踊りを見て居たい、本心を押し殺して勇者の後を追った。


23 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/05(火) 22:29:33.18 ID:K2WRvXDY0
 踊り子目掛けて手にした剣を放り投げた。
 高速で回転する凶器に狙われた標的はそれをいとも簡単に回避した。
 剣が地面に突き刺さるよりも早く、次の行動に移った踊り子は勇者との距離を一気に縮めた。
 身を低く屈めたまま、勇者の懐へもぐりこむ。
 勢いを保ったまま、短剣を突き上げるように喉元へねじ込む。
 
勇者「遅い」

 むなしく空を切った踊りの子の手の上に、勇者はそっと自らの手を重ねた。
 
勇者「散れ」

 手から手へと魔力が放出される。
 それを感じ取った踊り子が飛び退くが、もう遅い。
 勇者は表情を変えずに、過去の仲間の最後の瞬間を見つめた。
 体内に送り込まれた魔力が形をなして行く。

踊り子「・・・・!!」

 凶刃が内から華奢な体を二つに引き裂いた。


25 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/05(火) 22:35:41.52 ID:K2WRvXDY0
魔王「・・・・」

 黙って見ていた魔王の体へと血飛沫が飛んだ。

勇者「行くぞ。次は村の術師共だ」
魔王「な・・なんでこんなに簡単に・・」
勇者「お前はこうはならない」
魔王「・・・・」
勇者「おお。気が利く」

 そう言った勇者の前には数十人の術者達が立ち並んでいた。
 皆、高い段階の魔術を行使する者たちだ。
 治癒魔法により、傷を塞がれた村長が先頭に立っている。

村長「勇者様に化けた悪魔め・・!!」
勇者「・・魔王、お前が相手にするか?」
魔王「え? お、俺が・・?」
勇者「冗談だ」

 一歩、勇者が踏み出すと、空気が一変する。
 一斉に詠唱が始まり、複数の魔力が空間に飛散し、混沌とさせてゆく。

村長「悪魔め・・!! 娘の敵はとらせてもらうぞ!!」

 村長の放った魔術を始めとし、全ての術者が勇者へと魔力を撃つ。


28 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/05(火) 22:41:35.47 ID:K2WRvXDY0
魔王「ど、どうするんだよ・・!!」

 慌てて勇者にしがみついた魔王を他所に、勇者は右手を自らの胸においた。
 魔力の塊たちは様々に姿を変えて、勇者と魔王へどんどん近づいてくる。
 すっと、胸においた手を何かを払うようにゆっくりと動かした。

勇者「死ね」
 
 死を命じる言葉と同時に、勇者の魔術が施行される。
 自らに向かっている魔力を逆流させる術だ。
 火柱、氷柱、雷球、巨大な刃、無数の矢、巨大な岩の塊、異世界から呼び寄せられた異形の獣。
 すべてが元の魔力の塊へと還る。
 空気が歪んで見えた。
 その一瞬あと、全ての術者達の身がはちきれた。
 詠唱によって体内に蓄積されていた魔力をさらに増幅させた物が体内に逆流し、肉体の持つ許容量を超えたのだ。
 肉の一片が勇者の頬へとへばりついた。

魔王「・・・・」
勇者「宣戦布告だ」
魔王「本当に・・世界征服するのか・・」
勇者「帰るぞ」
魔王「あ、待って・・」


30 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/05(火) 22:44:27.48 ID:K2WRvXDY0
勇者「臭いな」
魔王「へ・・?」

 魔王の身を眺めて勇者が吐き出した。

勇者「風呂に入って血を洗い落として来い」
魔王「あ、ああ・・」

 素直に従うしか無いことを魔王は、完璧に覚えていた。
 どんな手を使ったところで恐らく、勇者には適わない。
 それなら、おとなしく従っているしかない。
 今後、反旗を翻すかは別として。

魔王「・・・・」

 勇者に着せられたいたワンピースを脱いで始めて異変に気づいた。
 第一に、魔族の王である証の紋章が消えている。
 生まれた時から全身に施されている、複雑怪奇な模様があったはずなのだ。
 おまけに肌は白く、肌色に、人に近い物になっている。
 もっとも魔王が恐怖したのは次の異変であった。
 胸が膨らんでいる。

魔王「勇者ー!!」

 ワンピースを着なおし、脱衣所を飛び出した。

勇者「煩いな。騒げと命じた覚えは無い」
魔王「これはどういう事なんだよ!!」
勇者「料理を作っている」
魔王「そっちじゃねえ!! 俺の体だよ!!」


32 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/05(火) 22:48:24.08 ID:K2WRvXDY0
勇者「体? 傷は治ってるだろう」
魔王「肌の色と言い、紋章と言い、胸と言い、何をした!!」
勇者「人に化けた方が何かと動きやすい」
魔王「だ、だからって・・大体変化くらい自分で・・」

 それ以上講義が続く事は無かった。
 勇者が料理に使っていたであろう包丁が魔王の眼前にあったのだ。
 表現上の眼前ではなく、文字通りの眼前だ。
 魔王の眼球と勇者の持つ包丁の間には布の一枚を通す隙も無かった。

勇者「水浴びを済まして来い。着替えは新しく用意してある物を着ろ」

 すごすごと魔王は浴室へと戻っていった。
 あくまで腹の内をさらけ出す気の無い勇者に若干の怒りと恐怖を感じながら。

魔王(・・どうなってるんだよ・・。魔方陣が使えなかったのもこのせいか・・?)
魔王(あいつの目的もさっぱりだ・・。ああ・・だめだ)
魔王(遅くなると何されるか、分からない。急いで体を拭いてしまおうか)


35 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/05(火) 22:53:53.68 ID:K2WRvXDY0
 身を清め終えた魔王を待っていたのは、豪勢な食事だった。
 ちょうど、勇者が最後の一品を厨房から運んできたところに、出くわした。

勇者「人間の飯は食えるか?」
魔王「・・動物の肉や植物だろう?」
勇者「わざわざ人間の肉を食おうとは思わない」

 この勇者なら人の肉であろうと食いそうだ、そう思っていた魔王は少し安堵した。

魔王「それにしても凄いな・・」
勇者「最近の勇者は料理に鍛冶に合成が必須技術になってるからな」

 専業の料理人顔負けの技術だ。
 現に、これほどまでに見事な料理を魔王は今まで見たことが無い。

勇者「まあ座れ」
 
 勇者は自分のすぐそばにあった椅子を引いた。
 ここに座れと言う意思表示であろう事を察し、魔王は大きな円卓を迂回して勇者のそばまで歩いた。
 
勇者「座れ」
魔王「う、うん・・ありがとう・・」
 
 勇者はたくさんある席からわざわざ魔王の隣を選んで座った。


38 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/05(火) 22:59:26.16 ID:K2WRvXDY0
魔王「・・・・」
 
 同族に躊躇いもなく手をかける非情さ。多数の術者を一瞬で殺す強大な力。
 魔界の王と呼ばれる者でさえ、勇者に対しては一抹の恐怖を覚えていた。

勇者「食わないのか?」
魔王「え、あ、うん・・」

 食事に手を伸ばす。魔王はただひたすらに勇者の言動だけが気になった。
 その気になれば恐らく簡単に自分すらも殺せるこの男が、なぜ自分に手料理なぞを振舞っているのか。
 ただ、口に入れた料理は見た目通り、今までに食べたどんな物よりも美味であった。

勇者「・・美味いか?」
魔王「あ、ああ・・」
勇者「それは良かった」
魔王「!?」
 
 表情をまったく変えずに、かつての仲間を殺した男が、一瞬口元を吊り上げて微笑んだかに見えた。
 しかし、それが見間違いであったのか、現実であったのかを確認する事は出来なかった。
 勇者は眉ひとつ動かさずに食事を取り始めた。
 食事中には喋らない事を信条としてるのかの如く押し黙る勇者に習って、魔王も黙って食事を取った。


43 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/05(火) 23:09:01.20 ID:K2WRvXDY0
勇者「・・・・」

 あっという間に料理は無くなった。
 二人共、能力もさることながら、食事量も人並みはずれているようだ。

魔王「ご、ごちそうさま・・」
勇者「口に合ったか?」
魔王「あ、うん・・美味しかった・・」
 
 世辞でも何でもなく、本心からそう思っていた。

勇者「それは良かったが・・」
魔王「え?」

 ふいに勇者の顔が魔王へと近づいてきた。
 何か気に障る行動を取っていたのだろうか。
 魔王は自分の挙動を疑った挙句、ただ目を閉じて恐怖を視覚的に排除することしか出来なかった。
 切り裂かれるのか、腹を貫かれるのか、目をくりぬかれるかも知れない。
 様々な死に様が再生されるが、そのどれもが訪れる事は無かった。

魔王「!?」
 
 勇者の唇が魔王の口の端に被さり、舌でひと舐めしただけであった。

勇者「ソースが付いていた」
魔王「あ、ああ・・」


45 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/05(火) 23:14:18.70 ID:K2WRvXDY0
 勇者の突飛な行動にも驚いたのだが、それ以上に驚いた事が魔王にはあった。
 舌が這った部分におぞましい程の快感が走ったのだ。
 痺れるような。甘美な響き。
 
魔王「お、おい・・」

 声を出して、はっとした。全身が熱い。疼く。
 衣類に擦れるだけで電気が走しるような快楽を生んでいた。

勇者「媚薬だ」
魔王「な・・!?」
勇者「安心しろ。男同士で絡み合う気は無い」
魔王「・・ど、どうするつもりだよ・・!!」
勇者「なに。単にお前にかけた術を早めただけだよ」
魔王「じゅ、術・・?」
勇者「安心しろ」

 勇者の顔が再び魔王へ近づけられる。
 耳元で囁くように勇者は言葉を続けた。

勇者「今とは比べ物にならない快感を与えてやる」
魔王「そ、そんなの・・」

 否定の言葉すら紡げない程に魔王の体には快楽に支配され始めていた。

勇者「この世界の全てと、限りない快楽を」
魔王「あ・・あうぅ・・」
勇者「なんだ? ちょっと媚薬が強力すぎたか? また風呂に入っておけよ」


46 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/05(火) 23:18:18.14 ID:K2WRvXDY0
 翌日、魔王は寒気で目が覚めた。
 勇者によって衣服を全て剥ぎ取られていた。

魔王「う、うわぁ!!」
勇者「まだ何もしていない」

 勇者は魔王に覆いかぶさるような格好をしていた。

魔王「な、なにやってるんだよ!!」
勇者「どれくらい術が進んだのかなと・・。だいぶ女らしい体付きになったじゃないか」
魔王「・・も、元に戻せよ!!」
勇者「死ぬか?」

 目に魔力を込めて魔王を見つめた。

魔王「う・・いや・・」

 威圧的な視線に魔王は言葉を濁すしかなかった。

勇者「きちんと術が完成すれば可愛がってやる」
魔王「・・・・」

 頬を赤らめた。すでに精神に居たっては少女のようになりつつあるのかもしれない。

勇者「今日は水中都市テーリエアを潰す」
魔王「水中都市・・」


50 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/05(火) 23:29:14.97 ID:K2WRvXDY0
勇者「そこにでかい教会がある。当然聖職者も大勢な」
魔王「あー・・俺、水も教会も」
 
 苦手だ、と言おうとした魔王の口を勇者が手でふさいだ。

勇者「ひとつ従ってもらう」
魔王「・・・・」
勇者「これからお前の一人称は『私』だ」
魔王「え・・ええ?」

 自分の言いたい事だけを言い終えると、勇者はさっさと歩き出した。
 水中都市を壊滅させるべく。

魔王「ま、待ってよ! 急にそんなこと言われたって・・」
勇者「服くらいきちんと着ろ」
魔王「ゆ、勇者が脱がせたんじゃないか!!」
勇者「もたもたするな」
魔王「あー!! もう!!」
 
 不思議と、勇者に従う事に対して嫌悪感はほとんど無くなっていた。
 もはやどう足掻いても敵わないと、心底見せ付けられた事もある。
 何よりも、勇者の巧みな鞭と飴による調教が功を制しているようだ。
 時折見せる、若干柔らかい勇者の表情に魔王の心は溶かされ始めている。


52 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/05(火) 23:35:39.58 ID:K2WRvXDY0
 前日と同じように、目的地へと座標を調整した魔方陣によって転移を行った。
 二人の前には広い湖が広がっている。

魔王「わあ・・」
勇者「お前の城や魔界では見られん景色だろう」
魔王「う、うん・・」

 水辺に近づき、手に水を浸けた。
 冷たい感触が広がった。

勇者「今日は俺が一人で行って来る」
魔王「え?」
勇者「水も教会も苦手なんだろう?」
魔王「う、うん・・」

 何をする訳でもない。
 勇者なら一人で何だって出来るのだから。
 それでも、魔王はどこか心の隅で、連れて行ってもらえるような心持でいたのだ。
 
勇者「不満か?」
魔王「そ、そんなことないよ・・」
勇者「水中都市にも聖職者どもはわんさかいるが、訪れる者も多い。気をつけろよ」

 意外な気遣いの言葉に魔王の頬は意図せずほころんだ。

魔王「ははは、俺がそんな・・」


54 日本語不自由ですいません。[勉強になります。] :2009/05/05(火) 23:41:14.50 ID:K2WRvXDY0
 本当に些細な動きしか見せない勇者の表情だが。
 今度の変化には魔王も気づいたようだ。
 それまでの顔を仏頂面とするならば、今は鬼の様な顔をしている。
 それくらい些細な変化ではあるのだが、勇者が気を損ねたのは明らかであった。
 一歩魔王へ近づく勇者に対して、魔王は後ずさりをする。

勇者「お前は俺に従わないつもりか?」
魔王「い、いや・・ごめん・・」
 
 さらに勇者は歩みを進める。
 合わせて後ずさる魔王だが、ついには腰を落とす。

魔王「ひっ・・」

 勇者の手が魔王の首にかけられる。

魔王「や、やだ・・ごめんって・・」

 黙ったまま力を加えてる勇者。

魔王「う・・うわぁぁ・・」

 ついには魔王の大きな二つの瞳から涙が。

魔王「ごめんなさいぃい・・」


56 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/05(火) 23:50:50.64 ID:K2WRvXDY0
勇者「・・・・」

 ようやく手が外された頃にはくっきりと手形が残っていた。
 ただの人間であればすでに死んでいるだけの力をかけられていたのだ。

魔王「ごめんなさい・・ごめんなさい・・」
勇者「それで?」
魔王「え・・えっと、わ、わた・・私は勇者に従います・・」

 その言葉に満足したのか、勇者は黙って水中へと沈んで行った。
 魔術により、水は割かれ、湖底に作られた石造りの階段が現れ、それを降りていく。
 やがて、勇者によって水が遮られている範囲は下へ下へと向かい、湖面には魔王の姿だけが映るようになった。

魔王「はあ・・」
魔王(殺されるのかと思った・・)

 ほっと安堵する魔王の背後に、ひとつの影が迫っていた。


60 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/06(水) 00:01:22.00 ID:Q1f6f6Wi0
 階段を降りる勇者の姿を水中から無数の奇魚が伺っていた。
 目が本来あるはずの、真横ではなく、その間の辺りにひとつだけ、巨大なものを拵えていた。
 この水中都市に住まう魔術師によって作られた奇魔の一種である。
 彼らに与えられた使命は水中都市への侵入者の監視だ。
 恐らく、先日のドレムルの村の襲撃は、戦闘に参加していたなかった魔術師により、広く伝えられているであろう。
 この奇魔達が水中都市の連中へと、勇者の来訪を伝えているはずだ。
 そうして、慌しく防衛策を練っている頃であろう。
 勇者はその事を思い、不適な笑みを一匹の奇魚へと向けた。
 魔力の篭ったその行為に、不運な一匹はゆっくりと腹を上にして水面へと上昇していった。
 
 やがて水中都市への入り口が見えてくる。
 勇者の算段は簡単だ。
 水中都市を水から守もる結界を張っている魔法石を破壊する。
 それだけでこの都市に住むほとんどの者は死滅する。
 勇者のように水を避ける程の魔力を持つ者は、戦闘に参加し、死んで行くからだ。
 都市の入り口に設けられた石のアーチをくぐると、すぐさま四方八方から無数の魔力が襲い掛かってきた。
 やはり村への襲撃の情報はここへも伝わっているようだ。
 歓迎の挨拶に勇者は手を2,3度叩いた。
 放射上に魔力が発せられ、黒い半球状の結界が勇者の周りに作り出される。
 水中都市の魔術師達が放った魔力群は全て、その結界に飲まれる。
 通常、魔術結界は魔力をはじき返す動きをするが、それは違った。
 その事に驚く間も無く、魔術師達は首筋に深い傷を作られ、血を噴出して行く。
 犯人は黒い結界から伸びる無数の触手達である。
 自身へ放出された魔力の軌跡を逆に辿り、攻撃者を仕留めるのが通常とは異なるこの結界の真価である。


64 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/06(水) 00:10:25.29 ID:Q1f6f6Wi0
勇者「やはり魔王の持っていた術は使える」
 
 累々と築かれた死骸の山の脇を通りながら勇者はつぶやいた。
 向かう先はこの都市の中心部に立てられた大教会である。
 設置されている神像こそがこの水中都市を支える魔法石なのだ。

勇者「来たか」
 
 第一波が突破される事は想定の範囲だったらしく、すぐさま次の軍勢が現れた。
 神官と戦士による混合軍だ。
 鋼鉄の全身鎧を身に纏った戦士を前衛に、神官達が背後から支援を行っている。
 すでに術者達の詠唱は始まっており、戦士達が持つ槍が眩く光輝いている。

勇者「なるほど」

 どうやら彼らの持つ情報は誤った物であるようだ。
 勇者が世界征服に乗り出したのではなく、勇者に化けた悪魔による惨殺が始まった。
 彼らの想定した敵は聖なる力を持つ勇者ではなく、闇の悪魔であるのだ。
 そうすると当然、悪魔の苦手とする光属性の攻撃を選ぶわけだ。
 ”オオオオォォ!!”と言う戦士達の雄たけびが結界までもを震わす。
 水滴が勇者へと落ちた。
 地を震わし、大群が勇者へと向かう。
 相変わらず表情を変えない男は、黙って手を横に振るい、何かを飛ばした。最初の標的は後衛の神官達だ。


67 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/06(水) 00:21:58.88 ID:Q1f6f6Wi0
 勇者の放った小さな粒状の何かが全ての神官達の顔に付着すると同時に、聖槍が勇者の体を突き刺した。
 一本、二本、三本、次々と突き刺さって行くが、勇者はぴくりとも動じない。
 物理的な損傷こそ受けていても、この程度であれば勇者にはなんら問題の無いものだ。
 自身の周りに旋風を起こし、戦士達を吹き飛ばす。
 重鎧に身を包んだ屈強な男達はいとも簡単に辺りの建物へと体を打ち付けられる。
 ほぼ同時に神官達が悲鳴を上げた。
 勇者の投げつけた物が孵化したのだ。
 這虫と呼ばれる使い魔で、蚯蚓のような体を持ち、人の肉を食らう。
 神官達の顔にのめり込む様に這虫達が食らい付く。
 これも魔王の所持していた術だ。
 何の役にも立つことの無かった戦士達は、呆然とその様子を眺めていた。
 勇者もまた、次の手を打つ訳でもなく、ただ黙っていた。
 しばし、這虫達の静かな食事の音と神官達の断末魔の悲鳴だけが轟いていたが、すぐにそれも止む。
 あっという間に声帯までも食らい、遂には神官の内の一人は全身を貪り尽くされる。
 骨だけになった人間に見切りをつけ、這虫は次の標的へ向かう。
 人を一人食らった程度では空腹は満たされない。姿は蚯蚓であっても、動きはその何倍もある。
 黙ってみて居た戦士達が、次の標的が誰であるのか気づくや否や、慌てて逃げ出すも、軽く追いつかれる。
 身を守るための重鎧が命取りになったのだ。
 わずかな隙間から入り込むと同時に、食事が始まった。
 慌てふためく戦士達を他所に、勇者は大教会の扉をゆっくりと開いた。


68 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/06(水) 00:27:38.13 ID:Q1f6f6Wi0
 水中の惨劇とは別に、湖面はただ静かであった。
 
魔王(勇者・・何してるのかな・・)

 両手をついて、水面を覗き込む。
 影が映っていた。
 自分の物と、他の誰かの物と。

魔王「!?」

 慌てて振り返ると同時に、水辺から僅かでも距離を取る。
 ちょうど、その人物の横に立つ形になった。
 真っ赤な鎧を纏った銀髪の女性であった。
 魔王と彼女の目が合う。
 真っ青な瞳を持つ魔王とは対照的に、その女性の瞳は真っ赤であった。

女戦士「君からボクの勇者の匂いがする・・」
魔王「・・!?」



71 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/06(水) 00:39:02.32 ID:Q1f6f6Wi0
 にじり寄って来る女性に対して、後ずさりをする魔王。
 何かただならぬ雰囲気に気おされている。
 ただ、魔力は一切感じられなかった。
 魔王は左手に炎の剣を作り出し、構える。

女戦士「その服・・ボクの為に買ってくれた奴じゃないかな・・」

 鋭い音を立てて、篭手に仕込まれた刀が現れた。
 手首の辺りから一本、また、全ての指の先にも刀が取り付けられているようだ。
 魔王を見つめるその瞳は、どこか虚ろであった。
 
女戦士「君が誰なのかは知らないけど・・ムカツク・・ムカツクよ・・」

 構えも何もないまま、じりじりとただ女は魔王との距離を詰める。
 魔王はそれに対し、射程にまで引き付けて一気に切り倒そうと思案していた。
 ふっと、風が吹き、湖面を漂っていた水鳥が飛び立つと同時に、魔王は戦士へ切りかかる。
 魔力の放出量を最大限まで引き上げ、馬鹿でかい炎の剣が女性を鎧ごと切り裂くはずだった。
 出力はあがらず、真っ赤な鎧に黒い傷をつけただけに留まった。

魔王「な・・!?」

 緩慢ま動きで、女戦士は魔王の背中に右手の6本の刀を突き刺した。
 続いて左手の6本が、腹から貫いた。
 鎧すら身に着けていない魔王の体は簡単に致命傷を負った。
 傷の治療を行う魔力すら生み出せない。
 それもそのはずだ。
 勇者は魔王に女体化の術を施すと同時に、魔力までも奪っていたのである。


75 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/06(水) 00:52:34.49 ID:Q1f6f6Wi0
 大教会の祭壇には、かつて冒険を共にした、銃士が立っていた。

銃士「どうやら悪魔では無いようだな」

 手にした魔銃の標準を勇者に合わせたまま銃士は言った。

銃士「魔王城で何があったかは知らないが、まだお前は引き返せる」

 元来、彼も神官であった。その為か、説教染みた物言いを好むようだ。

銃士「これまでお前がもたらしてきた平和を、自ら壊してどうする?」

 勇者は黙って祭壇へと向かって行く。

銃士「俺はお前の味方だ」

 勇者はただ進む。
 銃士は魔銃を祭壇の上に置いた。

銃士「・・戻ってくるんだ」

 祭壇のすぐ前に勇者は立ち、神像を見上げた。
 銃士は哀れむような視線を勇者へ送った。

勇者「邪魔だ」

 勇者が手を掲げた。
 それは銃士へ害を成す為ではなく、神像を破壊するためであった。
 特に感情の篭った行為と言う訳ではなく、気まぐれだった。
 銃声が響いた。


78 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/06(水) 01:01:14.78 ID:Q1f6f6Wi0
勇者「・・?」

 神像が砕ける音もそれに続いた。
 だが、二つの音は同じ事柄の上で発生したわけではない。
 祭壇に仕込まれた銃を発砲するためのスイッチを銃士が足で踏んだのだ。
 手を掲げた勇者が自分を殺すよりも早く、勇者を殺すために。

勇者「味方殺しか」

 腹から血を流しながら銃士をにらみつけた。
 銃士は、一瞬ばつの悪い顔をしたが、すぐさま殺意を込めた視線を勇者に向ける。
 祭壇に置かれた魔銃を素早く手に取り、数弾、勇者の眉間へ撃ち込んだ。

銃士「ははは・・もう戻れなかったようだな・・」

 床に倒れた勇者を見ろし、額の汗をぬぐった。
 しかし、勇者はすぐに魔術により傷を修復し、立ち上がった。

銃士「なに!?」
 
 彼と行動を共にして居た頃とは勇者の魔力は桁違いだ。
 致命傷からの回復なぞ、その当時の勇者には出来ない芸当だった。

勇者「俺は悟ったよ。人は自分の為に人を殺す生き物だと」
銃士「そ、それは・・それは違う!!」

 銃士は勇者を撃つ事は不可能だと悟り、再び説得を試みる。


83 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/06(水) 01:08:26.28 ID:Q1f6f6Wi0
銃士「たしかに今俺はお前を撃ったが・・」
勇者「黙れ。魔族に殺された人間と、戦争で死んだ人間、どちらが多いのか」
銃士「・・それは・・」
勇者「その癖に俺には世界を平和に導けだと?」
銃士「ち、違うんだ!! 良いか!?」
勇者「魔王城に残されていた、歴史書を見た」
銃士「それはうそだ!! だまされているんだ!!」
勇者「そもそも魔族が人間と対立を始めたのは、人間による弾圧から開放される為なんだ」
銃士「うそだ!! お前はだまされている!!」
勇者「・・どちらでも構わない。俺には魔王がいればそれで良い」
銃士「まて!! それも」

 嘘だ。騙されている。胴体から切り離された首が床に転がってもなお、ぱくぱくと動いた。
 
勇者「俺の意思の真偽は俺が決める」
 
 崩れ始めた水中都市からの脱出を試みる。
 もっとも、結界の崩壊に戸惑い、おびえ、逃げ惑う一般人たちにはたやすい事ではないが。
 勇者にとっては湖底からの脱出など、息をするのと同等の行為でしかなかった。


87 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/06(水) 01:20:33.58 ID:Q1f6f6Wi0
魔王「くう・・」

 僅かな魔力を行使し、転移術を行う。
 12本の刃に貫かれていた体を、やっとの思いで戦士の足元へ転がした。
 初級魔術師でさえも連発できる程度の転移で、魔王の魔力は底を尽いた。

女戦士「ねえ、勇者はどこ? ボクの勇者はどこ?」

 横たわる魔王の腹を踏み潰し、力を加えて行く。
 いつの間にか血液も紫から人と同じ赤へ変わっていた。
 水面に血が伸びて行く。

女戦士「殺したら、勇者、来るかな?」

 だいぶ、人間の女性の体へと変わりつつあっても、魔王の体の仕組みはまだ、魔族寄りであった。
 満身創痍の状態であれ、冷静な思考を保っている。
 どうにかこの状況を脱しなくては。
 すでに底を尽いた魔力を何とか生み出して、行使できる術を模索する。
 いいや、模索する程使える魔術の種類も無かった。だから、魔王はただ祈った。
 魔族の王たる者には少々不釣合いな行為ではあるが、ただ勇者の帰還を祈った。

女戦士「ねえ? 来る? 勇者はどこ?」

 ギラギラと光る刃が目の前でちらつく。
 そして、大きな魔力が近づいて来る感覚。
 勇者が水面を割いて現れた。

女戦士「勇者!!」
勇者「神官よりも厄介な者が訪ねてきていたか」


89 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/06(水) 01:30:28.36 ID:Q1f6f6Wi0
女戦士「ねえ!! どこに行ってたの!! ボクずっと探してたんだよ!!」

 半身を水に浸からせながら、女戦士が勇者に抱きつく。
 勇者はそれをまったく無視し、魔王へと近づく。

勇者「大丈夫みたいだな。この程度ならすぐに治療できる」

 声も出せないし、表情すら動かせなかったが、勇者の声ははっきりと魔王の耳へ届いていた。
 うなづく事も出来ずに、ただ水面を虚ろに眺めるしか出来ないほどの傷だが、勇者にかかれば大した物ではない。

女戦士「魔王倒したんでしょ!? またボクと一緒に冒険しようよ? ね? ね?」

 倒れ付した魔王の様子を伺っていた勇者の顔を真っ赤な瞳が覗き込む。
 心底煩わしい、と言った感じで勇者は女戦士を突き飛ばした。
 ザブンと音を立てて、水に沈む。

女戦士「わっ・・冷たい・・ねえ、勇者? 冷たいんだけど?」

 素知らぬ顔で、魔王の体を抱き上げる。
 血が滴り落ち、湖をますます赤く染めて行く。

女戦士「待ってよ」

 これまで一切見せなかった機敏な動きで勇者行く道を塞ぐ。

女戦士「ボクよりその子が大事なの? ねえ?」
勇者「そうだ」
女戦士「嘘だよ、嘘だね?」


94 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/06(水) 01:43:13.17 ID:Q1f6f6Wi0
 女戦士はいそいそと鎧を脱ぎ始める。
 構わずに歩き続ける勇者を追いながら、鎧をひとつずつ、脱ぎ捨てて行く。
 魔方陣により転移してきた位置を勇者は目指し続ける。
 戦士は時々転びながらも、鎧と衣服を全て脱ぎ捨て、勇者を追いかけ、再び道を塞いだ。 

女戦士「ほら!! 見てよ!! 勇者が好きにして良いんだよ? ねえ!?」

 芸術とも呼べる裸体であった。
 豊満な白い胸に、くびれた腰、生まれつきの色素の薄さが彩りまでも魅力的に見せている。
 魔王の目にもぼんやりとそれが映る。

女戦士「昔見たいに可愛がってよ!! ねえ!! いっぱい可愛がってくれたよね!?」
勇者「昔のこと何て知らん」

 勇者はとことん無視を決め込む。
 
女戦士「嘘だよね? ね? 抱きしめてくれるよね? いつも好きだって、言ってくれたもん、また言ってくれるよね?」

 断片的に紡がれる勇者と戦士の過去に、魔王は当惑する。
 自分は特別勇者に好かれていると、思っていたのだから当然だ。

女戦士「魔王を倒したら・・倒したら、ずっと一緒に居てくれるって」

 それ以上、言葉が紡がれる事は無かった。
 勇者の大剣が女戦士の口の中を通り、うなじを貫き、血を吹き散らせ、命を絶ったのだ。
 意識だけははっきりとしている魔王には、その光景が酷く綺麗で、残虐に写った。
 白い裸体に流れる真っ赤な鮮血。血溜りを作るその横に、勇者は立った。
 転送されてきた地点へ辿りついたのだ。
 勇者が転送呪文を唱え、転送が始まるその瞬間まで、魔王はただ真っ白なキャンパスに描かれるいくつもの赤を眺めていた。


96 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/06(水) 01:52:51.46 ID:Q1f6f6Wi0
 亜空間を通り、魔王城へと戻って来た頃には、魔王の傷は癒えてきていた。
 それと同時に、ずいぶんと勇者のかけた術も進んでいた。
 体のどの部位をとっても、魔王はもう女性でしかなかった。

魔王「どうして・・?」

 勇者に抱きかかえられたまま、魔王は素直に疑問を口にした。

魔王「どうして、殺したの?」
勇者「世界征服の為だ」
魔王「勇者の事、好きだって・・勇者も・・」

 先の言葉が発せられる前に、やや乱暴にベッドへ放り込まれた。

魔王「勇者も好きだったんでしょう?」

 思ったことを魔王は、そのまま話す。
 もう勇者への畏怖の念は少なかった。
 ただ愛しい、魔王の勇者に対する感情はそれだけであったかもしれない。
 勇者は黄金色の鎧を脱いでいる。

魔王「嫌いになったの?」


99 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/06(水) 02:03:50.85 ID:Q1f6f6Wi0
 さくっと、枕に頭を預けていた魔王の耳のすぐ横に剣が突き刺さった。

勇者「お前も死ぬか?」

 鎧を脱ぎ捨て、上半身を露出させた勇者が魔王に顔近づけ、問う。

魔王「勇者になら殺されても良い」

 まっすぐに視線を交わした。

魔王「あんなに優しく抱きかかえられた事何て無かった」

 勇者もまた、まっすぐに魔王を見つめている。

魔王「これも魔法のせいなの?」

 黙って頭に手を置いた。

魔王「魅了する魔法かな・・?」

 その手をゆっくりと動かして行く勇者。

魔王「・・魔法でも良いや・・ねえ、もっと」

 もっと。その声に応じて、勇者は魔王を抱きしめる。
 魔族の王の体だったものは、今はとても小さく、柔らかく、温かい。

魔王「いつか殺されるなら、それでも良いから」


102 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/06(水) 02:17:57.48 ID:Q1f6f6Wi0
 大きな揺れが、二人を襲ったが、勇者は気にするなと言った。

勇者「魔王は・・代々人間と戦って来たんだろう? 良いのか?」
魔王「・・勇者は人を殺してる」
勇者「それでも俺は人だ。老いて行くし、いつか死ぬ」
魔王「・・・・」
勇者「そんな奴の手中落ちて、あまつさえ女として抱かれるなんて、良いのか?」
魔王「良い・・」
勇者「魔力も奪われ、人よりも弱い存在にされて悔しくないのか?」
 
 魔王の脳裏にまだ王であった頃の記憶がよぎる。
 億の魔族を率いて、人間の軍勢と戦って居た頃の記憶が。
 名を出せばそれだけで、人々が震え上がり、魔族は全てひれ伏す。そんな自分の姿を思い返す。
 今は勇者の言うとおりに、場合によっては人よりも弱い。
 弱弱しく勇者の腕にしがみ付き、勇者に生かされる存在だ。

魔王「・・・・」

 過去を思うと胸が締め付けられるが、それでも、その全てさえ勇者に捧げたい程であった。

勇者「俺が憎くないのか? 魔族を殺したのもほとんどが俺だ」
魔王「・・・・」

 押し黙り、答えの代わりに勇者に強く抱きつく。

勇者「何もかも奪った俺が憎くないのか?」
魔王「もっと・・」
魔王「もっと奪って・・全部・・何もいらない・・から・・」

 再び大きく魔王城が揺れる中で、勇者と魔王、本来であれば相反する者同士がひとつになった。


105 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/06(水) 02:26:00.67 ID:Q1f6f6Wi0
魔王「ねえ・・さっきからどうしたんだろう?」
勇者「賢者だな」
魔王「賢者?」

 勇者はベッドから降りると、鎧を装着し直して行く。
 魔王を見つめていた優しげな表情は再び、無機質な仏頂面へと変化して行く。

勇者「昔の仲間だ。・・最後の一人にして最大の敵だ」

 寝室を出る勇者を、慌てて魔王が追う。

勇者「服くらい着ろ」
魔王「あ、うん・・」

 言われた通りに衣服を纏い、城の廊下へと出た。
 窓の外には巨大な飛竜の姿があった。

魔王「な・・なに・・?」
勇者「恐らくこの城を地上に落とすつもりだろう」
魔王「そ、それって・・人間の方から攻めて来たって事?」
勇者「好都合だ」
魔王「え?」
勇者「一気に人間共を一掃出来る」
魔王「うん・・」

 頷いては見るものの、そこに共感は無かった。
 もう何も魔王には、要らないのだ。勇者が要れば、世界征服なんてしなくとも、十分に満たされることが出来る。


108 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/06(水) 02:35:53.06 ID:Q1f6f6Wi0
 飛竜たちは、魔王城の壁に取り付けられた鎖を地上へと引いている。
 竜の背に乗る騎士達を殺す事も出来るが、勇者はしなかった。
 地上へ落ちた魔王城へ乗り込んでくる人間達を殺した方が、効率は良い。

勇者「行くぞ」
魔王「え? ねえ・・どうするの・・?」
勇者「飯だ」
魔王「でも・・」
 
 相変わらず城は揺れ続け、高度も若干ではあるが、落ち始めている。
 どう考えても食事を取っている場合ではないのだ。
 恐らく、この状況で食事に向かうのはこの勇者くらいだ。

勇者「俺に間違いはない」
 
 それなのに、魔王はいとも簡単に勇者に従わざるを得ない。
 抱き寄せられ、勇者の厚い胸板に頭を預け、ゆっくりと食堂へ向かった。

魔王「・・今日もご飯作ってくれるの?」
勇者「ああ。期待してろ」
魔王「ふふふ・・」

 豪勢な食事をあっという間に勇者は用意した。
 自らも調理を行いながら、魔法で様々な器具を一斉に動かすことによって、実現された。


111 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/06(水) 02:50:31.47 ID:Q1f6f6Wi0
 食事を取りながら、勇者は賢者の性格を想起し、作戦を練る。
 独裁的で自己の利益を最優先する国家であるベーネルク王国の竜騎士達を襲撃させた位だ、恐らく人材は最高の者を用意してるに違いない。
 これまでの術者など、話しにならないもの達がこれまた、これまで相手にした数とは比べ物にならない程に待ち構えているだろう。
 全く新しい、異種類の兵器や魔法も考えられる。
 しかし、それらは勇者の力の前には然したる効果は発揮しない。その自身が勇者にはあった。
 考えるのは魔王の身の安全である。
 魔力すら持たない彼女をいかに守るか。
 結界も常に魔力を送り続けなければ軽く破壊されるだろう。
 強靭かつ、無制限な結界は存在しないのだ。
 魔力を送り続ける事により、結界は長く効力を発し、またその威力も増して行く。
 水中都市のように結界に魔力を送り続ける存在があれば良いのだが、そんなものを用意することは不可能だ。
 かといって、魔王の傍に付きっ切りで結界を張り続けるわけには行かない。
 何せ賢者はかなりの切れ者だ。
 どんな状況であれ、手早くそれを打破する術を編み出す。
 防戦一方では敗北を確約されるようなものだ。

 勇者は、もっとも始めの記憶を思い出す。
 
 彼はただ、死に場所を探していたのだ。
 そんな時に出会ったのが、美しい顔の魔王であった。
 魔王の美貌の虜と化した勇者はこう考えた、魔王の願いである世界征服を成し遂げ、自分は死のう。


113 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/06(水) 03:00:40.02 ID:Q1f6f6Wi0
 その過程を楽しむための女体化であり、目的は魔王に世界の全てを託すことであった。
 ただ、今はその過程と目的が、捻じれてしまった。
 美味しそうに食事を取る彼女を、勇者は愛してしまっていた。
 そして、魔王もまた、当初の予定よりもずっと強く、勇者を愛してしまった。

 世界征服後に死ぬことを考えていた時から、賢者が魔王に対抗する軍団を作り出すのは頭にあった。
 そしてそれに対抗すべき方法も。
 今、勇者の内にある、光と闇の力を魔王に戻す。
 そうすることで、この大軍に敵う力を持った魔王が完成するはずであった。
 勿論それを実行すれば、今度は自分が今の魔王のように、人よりも弱い存在になるのだ。
 当然そんな者がこの戦いの渦中に居れば、すぐに野垂れ死にするのは目に見えていた。また、それで良いと思っていた。
 
 一際大きな揺れが発生し、加速度的に魔王城が下降し始めた。
 いよいよ何の対策も練られる間に魔王城は地上へ落ちようとしている。

魔王「ね、ねえ・・大丈夫・・だよね?」
勇者「問題ない」
魔王「うん・・あの・・あのさ・・」
勇者「なんだ? お前がいくら知恵を絞ったって俺には敵わないと思うが」
魔王「あ・・違くて・・その・・」
勇者「・・・・」
魔王「・・す・・好き・・って・・言っておきたかったの・・」
勇者「俺もだ」
魔王「・・うん」


115 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/06(水) 03:10:18.57 ID:Q1f6f6Wi0
 勇者はポンと、魔王の頭に手の平を置いた。

魔王「・・・・?」

 僅かな魔力を魔王の身に宿す。
 これでいざと言う時は魔力を魔王の身に移すことが出来る。
 自身も死ぬ気は無かったが、純粋に魔王の命を守りたかった。

勇者「中庭に出るぞ」
魔王「うんっ・・」

 目測で百の飛竜達が、城を地上へと導いていた。
 恐らく魔王城はこのまま何もせずとも、落ちるだろう。
 そう判断した勇者は、這虫を飛竜目掛けて放った。
 ほどなく、轟音の悲鳴をあげて、飛竜は次々と命を落としていった。

魔王「・・お城・・落ちちゃうね」

 魔王がしがみ付いて来た。
 これまでずっと、空に浮いていた自分の居城が地に落ちるのは、不快であり、不安であろう。
 ましてそれが、自分達に害意を持った連中の行いであれば、なお更である。
 勇者は黙って力強く魔王を抱きしめた。
 この戦いに勝利出来た時、その時はきっとまた同じように強く抱きしめよう。
 そう誓いを立てて、魔王の身を離した。
 激しい音と共に、魔王城は遂に地に落ちた。山々よりも高い砂煙が上がり、いよいよ決戦の火蓋が切って落とされた。


118 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/06(水) 03:25:01.53 ID:Q1f6f6Wi0
 先遣は、ペガサスに乗った騎士隊であった。
 砂煙の先から白い影が無数に現れる。
 飛竜程の高度は出せないが、それなりの飛行技術を持つ魔法生物。
 這虫のような弱い使い魔を放ったところで、ペガサスの発する光の気に消滅されられてしまう。
 地面に手を当て、魔力を送る勇者。
 魔王城の地面の形を変化させ、下から突き上げる巨大な槍を無数に作り出すのだ。
 数部隊が、勇者の作り出した槍の餌食になると同時に、細い物が勇者と魔王目掛けて放たれた。
 ペガサスの騎士隊は弓を使うようだ。

魔王「大丈夫・・だよね・・?」
勇者「俺の傍から絶対に離れるな」

 旋風が巻き起こり、矢を蹴散らす。
 勇者は100m以内に一本の矢も入れることなく、全ての攻撃を防いだ。
 同時に動かされていた、巨大な地面からの槍も、あらかたの敵を殲滅したようだ。
 砂埃が消え、残った僅かな騎士達が撤退して行くのが良く見える。
 息をつく間もなく、雄叫びが響き渡った。
 城内を通り、歩兵達が中庭へと向かってきて居たのだ。
 わらわらと、溢れるように兵達が現れる。
 廊下に作られた窓、巨大な石造りの扉、塀をよじ登り、降りて来る者まで居る。
 ところが、勇者の槍攻撃の武器となっていた為に、地面は半壊状態で、兵達は中々勇者の下へ辿り尽けずに悪戦苦闘を強いられている。
 勿論絶好の攻撃の機会を逃すわけもなく、這虫を無数に撒き散らす。
 瓦礫の間を縫うように、這虫達は人間達の肉貪るべく、突き進んでいった。


122 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/06(水) 03:36:48.59 ID:Q1f6f6Wi0
 やがてあちこちで悲鳴があがる。
 どうやら這虫への対策を講じた部隊では無い様だ。
 この程度か。そう勇者が思いかけたが、すぐにそれは思い過ごしだと分かる。
 浮遊魔法により宙に浮いた魔術師達が姿を現した。
 城を囲むように現れた彼らは一斉に魔法を放ち、這虫達を消し去る。
 兵士達に活気が戻る。
 だが、勇者にぬかりは無い。
 ペガサス部隊に使用した、槍の術を小規模で起こし、兵達を貫き始めた。
 無差別に突き上げられる槍たちは、命中精度こそ低くとも、数の多い兵達に痛手を与えるには十分だ。

 まずは歩兵達の殲滅を考えた勇者だが、すぐにあきらめざるを得ない状況に陥る。
 空の魔術師達が勇者の術に対応を始めたのだ。
 一点に集中して発生させる魔法であれば、たかが人間の魔術師にはかき消されることは無いが、今は別だ。
 槍達には必要最低限の魔力を与え、数を優先しているのだ。
 無数の術師達が放つ魔力は、勇者に槍を作らせるどころか、地面を整地させていく始末だ。
 
勇者「一歩も動くな」
魔王「え? え?」
 
 光の魔力の全てを行使し、魔王に強力な結界を施す。
 目的は防御ではなく、流れ弾の回避程度だ。
 残った魔力で勇者は自らの背に、漆黒の翼を作り出し、空へ飛ぶ。
 その間も、中庭の床は整地されてゆき、どんどんと兵士達と魔王の距離は縮んでいく。

勇者(奴らが魔王に辿りつくまであと10秒程度か)



126 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/06(水) 03:49:51.35 ID:Q1f6f6Wi0
 高速で東の空に浮かぶ魔術師団へと勇者は移動する。
 術師達も、まさかここで防御から攻めに転進するとは思っていなかったらしい。
 勇者に対して術の一つを唱える事も無く、半数近くが勇者の持つ大剣に引き裂かれた。
 大剣は大きさを増して行く、それを支える勇者の腕に、青筋が浮かび、筋肉が浮き出る。
 やがて魔王城の幅と同等までに巨大化した剣を勇者は円を書くように振るった。
 再び魔術師団がいくつも墜落して行く。
 空は随分と小奇麗にされた。

勇者「はあ・・はあ・・」

 兵の一人が息を切らし、地上に戻った勇者の魔力に吹き飛ばされた。
 魔王には誰一人として触れていない。
 眼前まで迫っていた兵達に、勇者は這虫を撒く。
 今度は邪魔する者も無く、存分に兵士を食い散らかして行く。

魔王「だ、大丈夫?」

 魔王にとって初めてみる表情だった。
 勇者が汗をかき、疲労の色を見せ、片膝をついている。

勇者「大丈夫だ・・」

 結界を解き、光の魔力を今度は自らの疲労回復へとまわす。
 何とか魔王の肩を借り、立ちあがると、一瞬にして魔王城が消滅した。

勇者「な・・!?」



127 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/06(水) 04:01:05.02 ID:Q1f6f6Wi0
賢者「お前の負けだよ、勇者」

 異変は城の消滅だけではない、魔術によって強化された騎士達が辺りを囲んでいたのだ。
 賢者の姿は見えず、声だけが響いている。

勇者「転移術か・・」

 城が消滅したのではなく、自分達が移動したのだ。
 勇者は魔王を抱き寄せ、マントの中に隠すような姿勢をとった。

賢者「どうしてそうなったのかは分からないがね・・、もう殺してやるしか無いようだ」
勇者「ふざけるなよ・・」
魔王「ゆ、勇者・・」
賢者「ふざけているのはどちらかな? 魔王なぞの肩をもちやがって」
勇者「人間共の家畜になっていればよかったのか!!」
賢者「人は皆、それぞれやらねばいけない事がある。勇者よ、分かるか?」
勇者「俺のやるべき事は魔王を守る事だけだ」
魔王「・・・・」
賢者「これ以上話しても無駄なようだ・・。やってしまえ」

 二人を囲んでいた騎士達の手の槍が一斉に突撃する。
 それらが体を貫く一瞬の間に、勇者は魔王へと魔力を送り込んだ。
 無数の槍の内、数本は勇者の体を貫き、残りは魔王の体に戻るなり、結界へと転身した魔力に弾かれた。

魔王「え・・?」


132 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/06(水) 04:13:41.25 ID:Q1f6f6Wi0
 血にまみれた勇者はその場に倒れた。

魔王「ゆ、勇者・・?」

 戸惑う魔王に、次なる攻撃が行われようとする。
 しかし、それよりも早く、魔王の魔力が放出され、大きな爆発を生んだ。
 魔王の体内へ魔力を戻す瞬間に、勇者は魔力の動きを予め仕組んでいた。
 勇者達を先頭で囲んでいた騎士達は吹き飛ぶが、すぐに後ろにいた残りの部隊が距離を詰める。

賢者「あきらめるんだ、魔王よ・・潔く、勇者共々滅べ・・!!」

 騎士達の攻撃が行われるが、またしても結界に阻まれる。
 魔王と勇者の両者を守るよりも、一人を守る現在の結界の方が強力なのだ、少しの揺るぎも生まれない。
 半ば無意識に結界を生み出した魔王だが、彼女の頭の中は勇者のことで一杯だ。
 信じられなかった。
 あの勇者が倒れるなんて。
 いいや、何よりもあの瞬間に自分の身を優先し、自ら犠牲になるなんて。
 人を殺すことに躊躇いすら覚えない勇者が助けてくれるなんて。

賢者「ふむ・・ワシが自らやるしかないようだ」

 騎士隊が道を開く。
 八つほどの列をなしていた騎士隊の、最後列に賢者はいた。
 厳格な顔つきの、初老の男性はゆっくりと騎士隊の作る道を歩き出した。
 魔王はまだ、混乱の渦中に居た。
 どうして、なんで。



138 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/06(水) 04:26:04.17 ID:Q1f6f6Wi0
賢者「この世界のあらゆる術師に託された魔力・・たとえ魔王と勇者、両者の力であろうとも、防ぎ切れまい」

 騎士隊の3列目ほどに立ち、賢者は詠唱を始めた。

魔王「・・!」

 微かな希望が魔王の心に響いた。

賢者「・・超重力の結界だ・・それを無数に生み出す・・」

 賢者の目の前に球形を持つ、超重力の結界が生まれる。
 いくつもいくつも、生み出される。
 何重にもなったそれは、空間を捻じ曲げる凶悪な塊となった。

賢者「その魔力で防げる物かな・・?」
 
 ゆっくりと動き始めたそれに対し、魔王は両手を広げた。

賢者「ははは、あきらめるのか? よろしい、すぐに楽にしてやろう・・!!」

 捻じれた空間はじりじりと進んで行く。

賢者「お前の体はねじ切れるのだよ・・!!」

 魔王は目を瞑り、天を仰いだ。

 すべてが、ゆっくりと進み、やがて空間は魔王を飲み込んだ。


142 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/06(水) 04:41:11.22 ID:Q1f6f6Wi0
賢者「おわったか・・」

 黒い球体が通り過ぎた後には何も残っていなかった。

勇者「ああ、終わりだ」

 聞こえる筈の無い声を聞いたと同時に、賢者は真っ二つに裂かれた。

魔王「はあ、怖かった・・」 
勇者「しかし、良くあの状況で俺に従った物だ」

 倒れたはずの勇者は僅かな魔力を身に残し、虫の息を保っていたのだ。
 勿論そのままでは魔王を転移させ、賢者の体を引き裂く真似が出来るはずは無い。
 賢者が詠唱を開始してから、すぐに勇者は魔王の精神へ呼びかけ、魔力を再度自らの身に戻したのだ。
 術に向かっていた魔王は、防ぐ事かが可能か不可能か以前に、防ぐ術すら持たぬ人の身だったのだ。
 魔力を送り出すには全ての結界を完全に解く必要があった。
 一抹でも不安があれば、結界を解き切る事が出来ずに、魔力の転送は失敗に終わっていた。

魔王「従うって、約束したから・・それに・・それに、声が聞こえた時から、ずっと信じてた」

 魔王からの魔力を得た勇者は、魔王の身を転移する術を用意し、傷を回復させ、同時に、騎士隊に石化の術をかけた。

勇者「帰るぞ。城をまた空に上げる」
魔王「うん・・勇者・・。帰ろう・・」

 石の騎士達に見守られる中、勇者は魔王を強く抱きしめた。
 この後、彼らは世界の頂点として君臨し続けたが、魔王城から出る事はほとんど無かったと言う。



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  • 名無しさん@ニュース2ちゃん 投稿日:2010/07/22(木) 12:21:49
  • 糞ジャップ土人は死ね
  •       投稿日:2010/07/22(木) 12:31:16
  • そのジャップ言語を読み書きできるとは※1はツンデレ
  • ななしカナ? 投稿日:2010/07/22(木) 12:40:31
  • オチが無ぇ…
  • ななしカナ? 投稿日:2010/07/22(木) 13:05:41
  • 意外とツマンナイというか、時間を潰したというか、下種が。
  •   投稿日:2010/07/22(木) 13:25:17
  • けいおんss読んでるような中身の無さ
    ある意味ssの魅力の一つかもしれんけど
  • ななしカナ? 投稿日:2010/07/22(木) 14:05:27
  • なんで最後まで読んだのか自分でもわからない
    おもしろくはないけど先の気になる話
  • ななしカナ? 投稿日:2010/07/22(木) 14:12:14
  • なんかめんどくせぇ
    魔王が女の子になるのはいいんだけどね
  • ななしカナ? 投稿日:2010/07/22(木) 14:15:06
  • 書きながら考えてる感じ。
    そしてまとめきれずに途中で投げた感じ。
    内容云々以前の問題。
    起と結は最初から決めて書けよ、と。
  • ななしカナ? 投稿日:2010/07/22(木) 14:23:12
  • なんか…リアクションに困るわ…
  • ななしカナ? 投稿日:2010/07/22(木) 14:25:17
  • 後読感が無いなんて珍しいssだ
  •   投稿日:2010/07/22(木) 14:52:57
  • 文章下手なつまらないSS読むよりもガッカリ感が強い
    なんか…なにこれ…
  •   投稿日:2010/07/22(木) 15:49:52
  • つまんね
    勇者の目的がとって付けたようなものだし
    行動に結びつく動機が意味不
    魔王の意思表示もさっぱり

    考えたのは中学生か?
  • ななしカナ? 投稿日:2010/07/22(木) 16:27:21
  • 勇者=自分。
    あるあるw 舞台は異世界で、自分は孤高で、最強で、いい女を従えてる妄想。
    そんな厨二的な妄想を、推敲も無しに垂れ流しちゃったんだねぇ。
    まとめたのは、晒し上げのつもりでって事なのかな? 可哀想な事をするねぇ……。
  • ななしカナ? 投稿日:2010/07/22(木) 16:58:17
  • 中身がない。中二妄想を小奇麗にしちゃってイタさすら薄い
    細かいところはそこまで絶望的に悪いわけじゃないんだけど
    なんていうかここまでつまんないとすら思えないレベルのはなかなかない
    とにかく無駄な時間を過ごしてしまった感がはんぱねえ
  • ななしカナ? 投稿日:2010/07/22(木) 17:14:39
  • 無駄に読ませる文章力があるな…
    話の作りは滅茶苦茶で中身は厨二の妄想なのに

    時間返して
  • ななしカナ? 投稿日:2010/07/22(木) 17:43:19
  • 作者は種族間の対立と人間のエゴを描きたかったのか?
    ありふれた内容で面白みを感じ無かった
    せっかくみんな好きな勇者と魔王を題材にしてるのに
    それを全然活かしてないよ
    一言で言うなら三文小説だな
  • ななしカナ? 投稿日:2010/07/22(木) 18:06:50
  • 勉強すればいいラノベ作家になれる??
  • ななしカナ? 投稿日:2010/07/22(木) 18:14:01
  • パクリ技術を磨けばなれるんじゃね
  • ななしカナ? 投稿日:2010/07/22(木) 19:04:15
  • びっくりするほどつまらない
  • ななしカナ? 投稿日:2010/07/22(木) 19:13:17
  • 僕の考えた勇者と魔王の話(恋愛編)
    って感じだな

    ラノベならファンはつくだろうね
  • ななしカナ? 投稿日:2010/07/22(木) 19:22:32
  • なんか気持ち悪かった
  • ななしカナ? 投稿日:2010/07/22(木) 21:08:42
  • この作者女なんじゃないのかなとふと思った
  • ななしカナ? 投稿日:2010/07/22(木) 21:42:09
  • 最後まで魔王が気持ち悪かったわw
    そしてつまらん
  • ななしカナ? 投稿日:2010/07/22(木) 22:25:06
  • なにこれ恥ずかしい
  • ohou 投稿日:2010/07/23(金) 07:58:15
  • 米のたたきがすごいがオレは面白かったぞ
  • 名無しさん@ニュース2ちゃん 投稿日:2010/07/23(金) 08:11:07
  • 鬼畜王ランスの魔王編の方が千倍くらい面白い
  • ななしカナ? 投稿日:2010/07/23(金) 09:09:44
  • ニホフゾ ニホフゾ
    ベーコン レタス 黒歴史風味 ノ ニホヒガスルゾ
  • 774 投稿日:2010/07/23(金) 23:00:27
  • 面白かったです。
  • ななしカナ? 投稿日:2010/07/23(金) 23:24:39
  • 俺には、理解が、追いつかない。
  • ななしカナ? 投稿日:2010/07/25(日) 00:23:24
  • 読みやすかったが・・・
    内容がないよ。面白くないよ・・・
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